(仮私訳部分に修正有り@3/7) 国連の人種差別撤廃条約の実施状況審査が、人種差別撤廃委員会(CERD)によって、2010年2月24日ー25日、ジュネーブで行われており、
朝鮮学校を高校授業料無償化法案の対象外にする動きに複数の委員から疑念を表明 されていたりする訳だが。
その審査概略が、The United Nations Office at Genevaにて公表されていると知った。
「
COMMITTEE ON ELIMINATION OF RACIAL DISCRIMINATION CONSIDERS REPORT OF JAPAN 」25 February 2010
知ったのは、反差別国際運動(IMADR)日本さんのコンテンツで。こちらには、冒頭の仮訳も掲載してくださっていたので、ざっと読んで気になった部分に、今回は重点を置いてみることにする。
人種差別撤廃委員会は日本の第3回から第6回の合同報告書を基に同国内で条約がどのように実施されているのかを審査した。(略) 暫定的な総括所見を述べる中で、日本報告の特別報告者であるパトリック・ソーンベリー氏は、人道的見地からの人種差別撤廃の重要性とそれを保障するための教育の重要性など、一部分においては日本政府と委員会の間に幅広い合意があると留意した。また、アイヌ民族の地位と国内人権機関創設に関する動きの方向性に関しても合意があったとした。しかし、部落民の問題と日本政府の“世系”の解釈など、委員会の懸念する分野が残されたままとなっている。委員会は人種差別に関する法律、憎悪発言の規制 、人権侵害救済の必要性、人権教育および人種差別と不寛容に対処するための一般市民の啓発、日本人以外の人びとと接触する職務につく公務員および公務員全般への教育の必要性を主張した。 日本代表との2日間にわたる審議の中で委員からいくつもの質問と問題点が挙げられた。それらには、外国籍者として日本に残り国籍を得ることができなかった在日コリアンの状況、教育政策が外国人の子どもたちに及ぼす影響に関するさらなる情報、インターネット上を含む外国人嫌悪や人種主義の動きをモニターするメカニズムの存在の有無 などがあった。(後略)
…「外国人嫌悪や人種主義の動きをモニターするメカニズムの存在の有無」ということは、あることを問題視されるはずはないだろう。すなわち(以下略。
委員会による審査概略の原文 からも、ヘイトスピーチ規制路線に関連しそうな部分を確認しておこう。
Mr. Thornberry was further concerned that there was a fairly tolerant approach to hate speech, in particular with regard to class derogation or in reference to a group of individuals as a whole, which might not be caught as easily as incidents of individual defamation, and thus not remedied or corrected. There were dangers to society in what could be called a "coarsening" of public debate, and there had been reports of incidents of rather gross statements made in public in Japan. ソーンベリー報告官は、更にとりわけ、蔑視される階層や個人からなる団体全体に特に向けられるヘイトスピーチに対し、かなり寛容な対応しかされていないことに、懸念していた。それらは個々の名誉毀損事件ほどそれと見破ることが容易ではないようで、それ故、救済も是正もなされないようだ。 それは、公領域議論の粗野化とでも呼ぶべき社会にとっての危険であり、また、日本で、公衆の面前でなされた酷い街宣事件の報告があった。
仮訳は付けているけど、あまり正確なものでないであろう事はご了承いただきたい
(*) 。この段落の後半部分、おこじょさんがご紹介の「
国連デビューしちゃったやばい人々 」のことだろう。
そして、最終段落で、
The Committee would argue for laws on racial discrimination; controls on hate speech; the need for remedies; the need for human rights education and education of the general population on matters to do with racial discrimination and tolerance; and the need for education of officials, including those in most regular contact with non-Japanese, Mr. Thornberry concluded. 委員会は、ソーンベリー報告官が結論した、人種差別に関する法律;ヘイトスピーチの規制;人権侵害救済の必要;人権教育及び人種差別と(人種間の)寛容に関する事柄についての市民啓発の必要;非日本人ともっとも定期的に接触する人を含む公務員への教育の必要、を主張する。
ヘイトスピーチ規制は、3月12日には発表される予定という国連・人種差別撤廃委員会からの日本政府への勧告を含む総括的な所見でも主張されるものと思われる。
なお、今回も
(も?) 日本政府からの報告は酷いものであったらしく、こちらで紹介されていた。
「
人種差別撤廃委員会で行われた日本の人権状況を審査する会合について - dj19の日記 」
やっしゃんはエントリを先住民族関連の記述でまとめてくださっているが、ご紹介の前田朗氏のブログエントリも必読だろう
(最初の一つにはブクマを付けて読んでいたのだが) 、特に審査後の記者会見のエントリが。
3月1日付で、「
前田朗Blog: グランサコネ通信2010-06 」、「
前田朗Blog: グランサコネ通信2010-07 」、「
前田朗Blog: グランサコネ通信2010-08 」。
一番後のエントリより一部ご紹介。
25日のCERD審査終了時、人種差別撤廃NGOネットワークは在ジュネーヴ記者に記者会見を行いました。朝日、毎日、共同、時事など。(略) 一つひとつ批判しているときりがないのですが、まずアイヌについては、先住民族と認めたことばかり強調しているが、その後の進展は見られない、作業部会などといっても記念公園と、生活実態調査だけに絞られていて、他のことは議題にもならない。UN権利宣言とは、まったくかけ離れている。非常に不満である。 朝鮮学校の件は、日本政府は事実を知ろうともしない、問合せも調査もせずに、勝手に決め付けて差別している。嫌がらせについても、人権擁護局が調査などというが、実際は20年間まともな調査をしたことがない。 部落については、上田大使の発言はとんでもない、1965年に逆戻りだ。志野課長がフォローしていたが、あの程度の認識だ。 沖縄については、まったく許せない。学問的にはわからないと言いながら、結論だけは勝手に決め付けている。沖縄語は日本語の変形だなどとなぜいえるのか。ずっと沖縄の声に耳を傾けようとしないではないか。委員が協議しろと何度も言ったのに、それには答えなかった。 移住者については、石原都知事のような差別発言問題に十分な配慮がない、など。(後略)
以下、「
ふと後ろを振り返ると、そこには夕焼けが - nagonaguの日記 」より、孫引き
沖縄県民が他府県と同じように、経済政策の主体となりえず、四〇年にわたって政府の直轄領のように補助金事業に依存する財政経済システムをとってきたのは、まさに沖縄差別である。
「沖縄差別」を肯定して、沖縄の主体性をとなえるのは、「自虐の論理」ではないか。
あっちにもこっちにも、荒涼たる風景が目に入り、ため息ばかりが出るような気がする。
* 、英語圏で言語学修士を取得した方とnative English speakerの方、他合計4人の方からご指摘等を頂き、訳部分を改訂しました@3/7
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人種差別撤廃委員会は日本の第3回から第6回の合同報告書を基に同国内で条約がどのように実施されているのかを審査した。(略) 暫定的な総括所見を述べる中で、日本報告の特別報告者であるパトリック・ソーンベリー氏は、人道的見地からの人種差別撤廃の重要性とそれを保障するための教育の重要性など、一部分においては日本政府と委員会の間に幅広い合意があると留意した。また、アイヌ民族の地位と国内人権機関創設に関する動きの方向性に関しても合意があったとした。しかし、部落民の問題と日本政府の“世系”の解釈など、委員会の懸念する分野が残されたままとなっている。委員会は人種差別に関する法律、憎悪発言の規制 、人権侵害救済の必要性、人権教育および人種差別と不寛容に対処するための一般市民の啓発、日本人以外の人びとと接触する職務につく公務員および公務員全般への教育の必要性を主張した。 日本代表との2日間にわたる審議の中で委員からいくつもの質問と問題点が挙げられた。それらには、外国籍者として日本に残り国籍を得ることができなかった在日コリアンの状況、教育政策が外国人の子どもたちに及ぼす影響に関するさらなる情報、インターネット上を含む外国人嫌悪や人種主義の動きをモニターするメカニズムの存在の有無 などがあった。(後略)
…「外国人嫌悪や人種主義の動きをモニターするメカニズムの存在の有無」ということは、あることを問題視されるはずはないだろう。すなわち(以下略。
委員会による審査概略の原文 からも、ヘイトスピーチ規制路線に関連しそうな部分を確認しておこう。
Mr. Thornberry was further concerned that there was a fairly tolerant approach to hate speech, in particular with regard to class derogation or in reference to a group of individuals as a whole, which might not be caught as easily as incidents of individual defamation, and thus not remedied or corrected. There were dangers to society in what could be called a "coarsening" of public debate, and there had been reports of incidents of rather gross statements made in public in Japan. ソーンベリー報告官は、更にとりわけ、蔑視される階層や個人からなる団体全体に特に向けられるヘイトスピーチに対し、かなり寛容な対応しかされていないことに、懸念していた。それらは個々の名誉毀損事件ほどそれと見破ることが容易ではないようで、それ故、救済も是正もなされないようだ。 それは、公領域議論の粗野化とでも呼ぶべき社会にとっての危険であり、また、日本で、公衆の面前でなされた酷い街宣事件の報告があった。
仮訳は付けているけど、あまり正確なものでないであろう事はご了承いただきたい
(*) 。この段落の後半部分、おこじょさんがご紹介の「
国連デビューしちゃったやばい人々 」のことだろう。
そして、最終段落で、
The Committee would argue for laws on racial discrimination; controls on hate speech; the need for remedies; the need for human rights education and education of the general population on matters to do with racial discrimination and tolerance; and the need for education of officials, including those in most regular contact with non-Japanese, Mr. Thornberry concluded. 委員会は、ソーンベリー報告官が結論した、人種差別に関する法律;ヘイトスピーチの規制;人権侵害救済の必要;人権教育及び人種差別と(人種間の)寛容に関する事柄についての市民啓発の必要;非日本人ともっとも定期的に接触する人を含む公務員への教育の必要、を主張する。
ヘイトスピーチ規制は、3月12日には発表される予定という国連・人種差別撤廃委員会からの日本政府への勧告を含む総括的な所見でも主張されるものと思われる。
なお、今回も
(も?) 日本政府からの報告は酷いものであったらしく、こちらで紹介されていた。
「
人種差別撤廃委員会で行われた日本の人権状況を審査する会合について - dj19の日記 」
やっしゃんはエントリを先住民族関連の記述でまとめてくださっているが、ご紹介の前田朗氏のブログエントリも必読だろう
(最初の一つにはブクマを付けて読んでいたのだが) 、特に審査後の記者会見のエントリが。
3月1日付で、「
前田朗Blog: グランサコネ通信2010-06 」、「
前田朗Blog: グランサコネ通信2010-07 」、「
前田朗Blog: グランサコネ通信2010-08 」。
一番後のエントリより一部ご紹介。
25日のCERD審査終了時、人種差別撤廃NGOネットワークは在ジュネーヴ記者に記者会見を行いました。朝日、毎日、共同、時事など。(略) 一つひとつ批判しているときりがないのですが、まずアイヌについては、先住民族と認めたことばかり強調しているが、その後の進展は見られない、作業部会などといっても記念公園と、生活実態調査だけに絞られていて、他のことは議題にもならない。UN権利宣言とは、まったくかけ離れている。非常に不満である。 朝鮮学校の件は、日本政府は事実を知ろうともしない、問合せも調査もせずに、勝手に決め付けて差別している。嫌がらせについても、人権擁護局が調査などというが、実際は20年間まともな調査をしたことがない。 部落については、上田大使の発言はとんでもない、1965年に逆戻りだ。志野課長がフォローしていたが、あの程度の認識だ。 沖縄については、まったく許せない。学問的にはわからないと言いながら、結論だけは勝手に決め付けている。沖縄語は日本語の変形だなどとなぜいえるのか。ずっと沖縄の声に耳を傾けようとしないではないか。委員が協議しろと何度も言ったのに、それには答えなかった。 移住者については、石原都知事のような差別発言問題に十分な配慮がない、など。(後略)
以下、「
ふと後ろを振り返ると、そこには夕焼けが - nagonaguの日記 」より、孫引き
沖縄県民が他府県と同じように、経済政策の主体となりえず、四〇年にわたって政府の直轄領のように補助金事業に依存する財政経済システムをとってきたのは、まさに沖縄差別である。
「沖縄差別」を肯定して、沖縄の主体性をとなえるのは、「自虐の論理」ではないか。
あっちにもこっちにも、荒涼たる風景が目に入り、ため息ばかりが出るような気がする。
* 、英語圏で言語学修士を取得した方とnative English speakerの方、他合計4人の方からご指摘等を頂き、訳部分を改訂しました@3/7
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No. 6839
和訳部分、より正確な意味を御教授いただいたので修正しました。
ご指摘いただきました、○●△さん、●×◇さま、■□さん、ありがとうございました。
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URL
JCJ神奈川支部ブログ
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その差別的な政策方針をまともな提案であるか...
[2010/03/13 15:29]
URL
村野瀬玲奈の秘書課広報室