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「海南島戦時性暴力被害賠償請求」高裁判決のメモ 

 26日付のエントリ、『福岡市議会が「慰安婦」問題に政府が誠実に対応するよう求める意見書を採択』のコメント欄にメモしておいた様に、26日の15時に『海南島戦時性暴力被害賠償請求事件』の高裁判決がでている。
 不本意ながらの予想通り、一審判決が支持されて、控訴は棄却された。即座と表現して良いであろう2009年3月26日 17:58付で『中国人戦争被害者の要求を支える会』に公表された『弁護団声明』(海南島戦時性暴力被害賠償請求事件弁護団および中国人戦争被害賠償請求事件弁護団)によると、支援者の皆様が尽力されてきた結果がみえる、かなり踏み込んだ内容であるようだ。

 「日本軍慰安婦」問題に関する報道は、いつもながら少ない。日本紙では、しんぶん赤旗がそれなりに、毎日が簡素に報じた程度だ。その為か、裁判で勝訴していないから「日本軍慰安婦」問題で被害事実もなかったように受け取っていると覚しき人がネットでは散見できるようだ。実際には、事実認定の段階に至った裁判では、被害事実は認められているのに。ここでは、26日 21:17付で『海南島訴訟判決文全文』もアップされていたたので、弁護団声明にしめされたポイントに沿って判決文を確認し、メモしておこう。

 高等裁判所の判断として証拠・証言等によれば「以下の事実が認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない」として20ページ以降に認定された事実が、「(1)本件の背景事情」(昭和6年9月18日の満州事件を契機に~軍事慰安所の設置など)から列挙される。

 「(2)本件被害女性らの被害事実等」では被害を訴えられている、黄有良さん、陳亜扁さん、譚亜洞さん、玉民さん、林亜金さん、陳金玉さん、亡くなった譚玉蓮さんと黄玉鳳さんの認定された被害事実が記述される。かなり重いが、譚玉蓮さんと黄玉鳳さんの被害を引用しておこう。これが高等裁判所でも認定された被害なのだ。

 譚玉蓮は,大正14年(1925年)陰暦7月ころに保亭県南林郷南通村で生まれた黎族の女性である。同人は,昭和18年の春,日本軍が南郷に入り藤橋から三道を経て南林までの道路敷設をした際,18歳で徴用されて労働者となり、南林の拠点に連行された。そして連行されたその日のうちに,日本軍の食事の支度や選択の担当者との名目で「戦地後勤服務隊」に選ばれた。譚玉蓮は,南林で戦地後勤服務隊として仕事をしている最中に,山中に連れ込まれ、複数の日本軍人に強姦された。譚玉蓮は,拠点でその日の夜,通訳から「逃げ出すことはできない。もし誰かが逃げ出せば他の者や家族を殺す。」と言われたことから,日本軍人に従わざるを得なかった。譚玉蓮は,茅葺きの掘っ立て小屋に間仕切りをしただけの粗末な個室に入れられ,ほぼ毎日複数の日本軍人に強姦された。譚玉蓮は,いったん南林の拠点から逃げ出すことに成功したが,再び日本軍にとらえられて連れ戻され,それから1年以上の間同所に監禁されて過ごした。その後譚玉蓮は,大村に連れて行かれたが,昭和20年半ばになると大村に駐屯していた日本軍が混乱し始めたため,譚玉蓮は,その隙を見て逃げ出した。


海南島訴訟判決文全文』21ー22ページ』

 黄玉鳳は,保亭県加茂毛林村で生まれた黎族の女性である。黄玉鳳は,昭和15年ころから日本軍に徴用され野菜や葉たばこの栽培に従事していたが,昭和18年末ころ,頼進興という日本軍の協力者に脅迫され,同人の手引きにより日本軍人に引き渡され強姦された。黄玉鳳が監禁されていた場所は,駐屯地内の小部屋で「日本娘の部屋」と呼ばれる建物の一角にあった。黄玉鳳は,毎日のように昼夜を問わず複数の日本軍人に強姦され,日本娘と呼ばれていた慰安婦が来た時にだけ休むことができた。黄玉鳳は,一度逃げ出したことがあったが,すぐに捕まり控訴人陳金玉に加えられたのと同様の制裁が加えられたことから,その後逃走を試みたことはない。黄玉鳳は,終戦間際,日本軍の隊長が殺害された混乱時に隙を見て逃げた。


海南島訴訟判決文全文』25ページ』

 他の方も、監禁中、頻繁に暴力を振るわれ、現在に至るまで骨が変形した方もいらっしゃる。今回来日された陳金玉さんは14歳の時から被害に遭い、一旦は脱出に成功して山中に隠れていると同じ村の住人が日本軍から拷問を受けたために、村人を救うためと説得されて、再度日本軍駐屯地に連行されたという。これが、黄玉鳳さんの被害で言及のある「同様の制裁」だ。

 この被害事実の記述に続けて、加害行為における連行や移送、連れ戻しや監禁および被害者の自由を奪う行為は、「着剣し銃などで武装した日本軍人による暴力や生命,身体に対する害悪の告知等によって行われたもの」,部隊の「隊長」と呼ばれる軍人が率先して敢行する場合もあったと認定され、ハーグ陸戦条約の附属規則として、占領地住民との関係で占領軍が遵守すべきことを定めたハーグ陸戦規則46条違反で、ハーグ陸戦条約3条に該当し、戦時国際法違反であることが判決で認定されている。また、陸軍刑法や海軍刑法によって処断されるべき重大な犯罪行為であり、

本件被害女性らは,本件加害行為を受けた当時,14歳から19歳までの女性であったのであり,このような本件被害女性らに対し軍の力により威圧しあるいは脅迫して自己の性欲を満足させるために陵辱の限りを尽くした軍人らの本件加害行為は,極めて卑劣な行為であって,厳しい非難を受けるべきである。このような本件加害行為により本件被害女性らが受けた被害は誠に深刻であって,これが既に癒されたとか,償われたとかいうことができないことは本件の経緯から明らかであるが,本件加害行為を原因として,被控訴人が,本件被害女性らに対し,直接に法的責任を負うか否かについては,さらに検討が必要である。


海南島訴訟判決文全文』28ページ』

と、加害行為を厳しく断罪しつつも、最後の方でもごもごとなっているのは、重大な犯罪行為と解りきっているものを、それこそ公式の命令文書を出したりのレベルでやるわけではないので被控訴人=国が「直接に法的責任を負うか否かについては,さらに検討が必要である」となっているという話の筋道であるらしい(判決文の33ページにて,国家無答責と民法709条規程が適用できない理由として述べられるのもそうだろう)。
 さらに検討が必要って,ではどこで誰が検討するのかと巨大な疑問が生じるのだが。

 そして、被害者の皆様が今も苦しんでいる「精神障害」についても認定がされている。

証拠(甲64,65,68ないし70)及び弁論の全主旨によれば,本件加害行為により,本件被害女性らのうち,控訴人とう玉民はPTSDに罹患し,控訴人黄有良,同陳亜扁,同譚亜洞、同林亜金及び同陳金玉はいずれも「破局的体験後の持続的人格変化」に罹患していることが認められ,亡譚玉蓮及び亡黄玉鳳はいずれもPTSDに罹患していたものと推認することができる。
(中略)
(3)「破局的体験後の持続的人格変化」について
ア 以前に人格障害のない人に,破局的なあるいは過度に持続するストレスに続いて,あるいは重症の精神科的疾患に続いて,発展した成人期の人格と行動に障害が生ずる場合がある。これを「破局的体験後の持続的人格変化」という。ストレスは,(中略)強制収容所体験,拷問,大惨事,人質になるあるいは殺害される可能性が切迫している持続的な捕らわれの身であることなどの生命を脅かす状況に持続的にさらされることなどである。
 「破局的体験後の持続的人格変化」は,ヨーロッパでは,ナチスの収容所の生存者の研究から知られるようになったが,日本の精神医学では,ほとんど知られていない。(中略)
イ 「破局的体験後の持続的人格変化」は,持続的であり,柔軟性を欠く適応障害の特徴を示し,対人的,社会的及び職業的な機能の障害に至るものである。(後略)


海南島訴訟判決文全文』29ー31ページ』



 これら被害に対する加害行為は、ハーグ陸戦条約および規則等の国際法違反であり国の公権力の行使にあたると認められないので国家無答責の原則は適用外とされ、また、日本国家自体の組織的な不法行為とまで認めるには足りないとして民法709条は適用できないという話らしいのだが、民法715条が適用されるという。

 本件加害行為は,上記のとおり,これに関与した日本軍人らの職務執行行為そのものに該当するとは認められないが,上記認定事実によると,日本軍の戦闘行為及び占領行為と密接な関連を有すると認められ,これによって本件被害女性らが被った損害は,被控訴人の被用者である日本の軍人がその事業の執行につき加えた損害にあたると言うべきである。したがって,日本軍人らの本件加害行為により本件被害女性らが被った著しい身体的・精神的損害につき,被控訴人の本件被害女性らに対する民法715条1項に基づく損害賠償義務の発生が認められ,本件被害女性らは,被控訴人に対し,その損害賠償請求権を取得したと認められる。


海南島訴訟判決文全文』34ページ』

 損害賠償請求権は認められているのである。

 しかし、サンフランシスコ平和条約の枠組みにおける請求権放棄の主旨が「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく,当該請求権に基づいて裁判上請求する権能を失わせるに留めるものと解するのが相当」(39ページ)とあり、日中共同声明がサンフランシスコ平和条約の枠組みにそった平和条約の実質を有するものと介すべき(40ページ)とされた、ということらしい。弁護団声明のこの件の部分だ。

3 しかしながら,本判決は,2007.4.27最高裁判決を踏襲し,控訴人らの損害賠償請求権について,日中共同声明第5項により「裁判上訴求する権能」が放棄されたことを理由に控訴を棄却した。

もっとも本判決は,最高裁判決と同様,個人の賠償請求権につき,その権利は実体的には消滅しないと判示した。

これは個人の賠償請求権につき,裁判上訴求する機能のみが失われたとするものであり,個別具体的な請求権について,債務者側において任意の自発的な対応をすることは何ら妨げられないとを認めたものである。

4 この点,日本政府も,二国間条約で損害賠償問題は解決済みであるとの主張しながらも,「慰安婦」の問題について解決されていない問題があると認め,1993年,河野洋平官房長官の談話(以下「河野談話」という)において,被害者に対して事実を認め謝罪をし,適切な措置をとることを表明した。

そして,日本政府は,「慰安婦」問題につき「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」を設置したが,同基金によってすら中国人被害者に関しては何らの措置もとられていない。

したがって,本判決で損害賠償請求権が裁判上訴求できないからといって問題が解決されたわけではなく,未だ河野談話の見地にたって解決されなければならないことにかわりはない。

しかも,それは過去の戦後処理の問題ではなく,被害者らが今なお苦しみの中で生きており,まさに現代において速やかに解決すべき課題である。


 この結果を報じていることがネットで確認できる日本の報道は、わずかに毎日新聞としんぶん赤旗しかみあたらない。
毎日新聞 2009年3月27日 東京朝刊『慰安婦訴訟:最後の訴訟、2審も原告敗訴--東京高裁』では、全体でも6行ほどの報道で、説明も

「武装した日本軍人の脅迫を背景に拉致や継続的な性暴力があった」と認定したが、「72年の日中共同声明で中国国民は裁判で賠償請求できなくなった」とする最高裁判例(07年4月)を踏襲した。

とあるのみで、訴えられた被害事実は記述されない。

 2009年3月27日(金)「しんぶん赤旗」『性暴力卑劣さ断罪  賠償請求は棄却を踏襲  海南島訴訟東京高裁判決』では、もう少し詳細に報じており、すでに上告がされていることも言及されていた。また、報道の最後には、

 明治憲法下での国家の不法行為について国は責任を負わなくてよいとする「国家無答責の法理」の適用を訴える国の主張を退けました。

 原告側弁護団は一審判決から「大きく前進した」と評価しました。小野寺利孝団長代行は被害者の高齢化で同裁判が実質的に最後の「慰安婦」裁判になると指摘。今後は政治的解決を求めていくとのべました。

ともあった。

 英語報道は少なかった。
新華社電英語版 2009-03-27 00:01:11『Tokyo court rejects damages suit filed by WWII Chinese sex slaves
Breaking News: The Post Chronicle  Mar 27, 2009『Lawsuit over WWII sex slavery dismissed

 韓国語報道は二報ほど見つけたと思ったのだが、今探し直すと一報しか見当たらない。
ニュースウェイ 2009年 03月 27日 (金) 11:53:41 『중국 위안부 할머니 도쿄 시위 (中国慰安婦老婦 東京でデモ)』

 中国語報道では、実は23日頃から判決のために陳金玉さんが来日されるとの報道がかなりたくさん出ていたのだが、判決結果についても新華社電配信のを中心に、簡素な報道も含めて多数報じられているようだ。判決を報じる内容は、だいたい新華社電をベースにした類似の内容のようだった。
新華網 2009年03月26日 23:29:47 『中國海南島“慰安婦”原告二審再次敗訴
中国評論新聞網 2009年03月26日 23:29:47 『海南慰安婦受害人在日本索賠案二審敗訴
蘋果動新聞 20090326 『東京高等法院 判慰安婦二審敗訴
成報(多分シンガポール) 2009年3月28日 『遭日法院二審駁回 海南慰安婦決上訴
中央日報網路報(台湾) 2009-03-27 11:28:59 『大陸/二審敗訴意義猶存 海南慰安婦漫漫訴訟不停

 人民網日本語版では、新華網が伝えた内容として、訴えの内容と敗訴を伝えた報道で、こう報じている(だいたいこういう内容が中国語圏では報じられている)

 東京高等裁判所の渡辺等裁判長は、判決の中で原告の敗訴を言い渡したものの、 旧日本軍が第2次世界大戦中に海南島で婦女を連行し、監禁したうえで暴行をはたらいた事実を認めた。

 今回の二審判決に立ち会うためにわざわざ東京を訪れた原告の一人、海南省の少数民族、黎族(リー族)の陳金玉さんは判決後、「判決結果に不服です。上訴して裁判を続けます」と語った。

 旧日本軍は第2次世界大戦で海南島を占領し、駐屯地近くに「慰安所」を設置。当時14-18歳の少女らを多数連行し、「慰安所」に監禁したうえで、暴行をはたらいた。


人民網日本語版 13:52 Mar 27 2009『海南島「慰安婦」裁判 原告側、二審も敗訴より一部』


 なお、陳金玉さんは12月にも第二審第二回公判の証言のために来日されており、その際の報道はこうあった。

陳金玉さんがここまで強い意思を貫く理由はただ一つ、死を賭しても被害を受けた仲間の潔白を晴らすこと。(中略)原告の代表として出廷する陳金玉さんは中国を発つ前、「今回日本に行って潔白を証明できるかわからないが、生きている限り、絶対にあきらめない」と記者に語った。

 2001年7月、海南島「慰安婦」事件の被害者である黄有良さん、陳亜扁さん、林亜金さん、陳金玉さんら8人は日本政府を提訴し、被害者の潔白を晴らす公開謝罪と損害賠償を請求。2006年8月30日午後、東京地裁は第一審判決で、原告側の訴えを斥けた。この敗訴の翌日、原告の一人、楊さんは無念のままこの世を去る。


人民網日本語版 2008-12-22 15:11:33 『82歳の老婦、海南島「慰安婦」裁判で東京へより一部』


 日本政府が国際社会からの批判に対する言い訳としてもちだし、一応、国際的にも「被害者に対して認めた道徳的責任を満たすために取ることを考えた政府の唯一の措置」として評価を受けていないわけでもない「アジア女性基金」ですら、被害者の多くから拒否されているのが現状だ。しかし、そのアジア女性基金さえ、受け取っている中国人「慰安婦」被害者はいらっしゃらないことは、どれだけ日本社会で知られているのだろう。
 これだけの被害を被らせ、損害賠償権が認められながら、裁判上請求できない。実に美しい国だ。


その他、参考メモ;
人民網日本語版 2001年11月25日11:23(北京時間) 『海南島の元慰安婦8人が日本政府を告訴

しんぶん赤旗 2007年7月16日(月) ゆうPress 『暴行されたのは私と同じ人間だ  「慰安婦」裁判支えるネット 百数十人に成長

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ユーザータグ:  日本軍性奴隷制問題
[ 2009/03/29 15:16 ] 自爆史観 | TB(0) | CM(0)

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