気にしていた話題だったが、見落としていた。
経済協力開発機構(OECD)が、加盟各国中の比較可能な統計がある28ヶ国について、2005年度の国内総生産(GDP)に占める教育への公財政支出割合について調査結果を発表していたと、9日に報道が出ていた。
そして、2003年に「教育への公財政支出割合」が最下位、2004年にはワースト2位だった日本は、今年は去年より0.1%割合が減少して3.4%となり、
ワースト1位に返り咲いたという。
以下、拾った報道を集めておく。
(なお、以下、強調等のある箇所は引用者による)
共同通信 9月9日18時54分付
『
教育投資、日本は最下位 OECDの05年調査 (魚拓無し)』
(略)
調査は国と自治体の支出総額が対象。(略)調査結果によると、28カ国の平均は5・0%。1位は7・2%のアイスランドでデンマークの6・8%、スウェーデンの6・2%が続き、北欧の国が上位を占めた。下位3カ国は日本のほかスロバキアとギリシャ。
教育段階別の公財政支出でみると、小中高校までの初等中等教育では、日本は2・6%で下から3番目。大学などの高等教育は0・5%で各国平均のほぼ半分となり最下位だった。
『先進国最低の教育投資について文部科学省は「GDPは伸びたが、少子化の影響で公立学校の教員数が減り、給与支出や施設整備費が減ったことが背景にある」としている』のだそうな。
読売新聞 2008年9月10日03時12分付
『
公的な教育支出、日本は「最低」…OECD調査 (魚拓無し)』
(略)
調査は、2005年の1年間に幼稚園から大学までかかった教育費などを調べた。GDPに占める教育支出の割合は、OECD平均が5・0%。日本は前年比0・1ポイント減の3・4%で、統計がないルクセンブルクとトルコを除く28か国の中で最下位だった。トップはアイスランドの7・2%。2位以下はデンマーク、スウェーデン、フィンランドと続き、米国は16位だった。
こちらでの報道では、OECD教育局が「各国が教育予算を増やす傾向にあり、日本と差が開きつつある」と指摘しているという。
asahi.com 2008年9月9日22時50分付
『
教育への公的支出、日本最下位 家計に頼る構図鮮明 (魚拓無し)』
(略)
家計などから出される私費負担の割合は、小学校入学前の就学前教育と、大学などの高等教育で、加盟国の平均を大きく上回った。
私費負担も加えた教育機関への支出は、05年がGDP比4.9%となり、26カ国中20位。教育機関への支出のうち私費負担が占める割合は、初等中等教育は9.9%で平均の8.5%とほぼ同じだったが、就学前教育では55.7%(平均は19.8%)、高等教育は66.3%(同26.9%)となった。
家計支出に頼る割合が他国より大きく、OECDの担当者は「教育に戦略的投資をどう確保していくかが日本の課題だ」と指摘した。(後略)
朝日の報道ではきちんと、『公的支出をめぐっては、「教育振興基本計画」(7月に閣議決定)にGDP比5.0%まで引き上げると明記するよう文科省が求めたが、財務省などが反発。見送られた経緯がある』と、言及されている。
毎日新聞 2008年9月9日 21時31分付
『
教育予算:日本がOECD加盟国中最低 GDP比 (魚拓無し)』
(略)
政府の支出全体に占める教育支出の割合は9.5%で、OECD平均の13.2%を大きく下回った。日本の教育支出は、私費割合が31.4%(OECD平均は14.5%)と高いのが特徴だが、公費と私費を足した教育支出の対GDP比も4.9%でOECD平均の5.8%と開きがある。
OECDは「他国では教育支出が急上昇しているが、日本は教育以外の分野を選んで投資している。将来に向け教育にどう戦略的に投資するかが日本の課題だ」と指摘した。(後略)
毎日の報道でも『財務省は今回の結果についても「日本の子どもの割合はデータがある25カ国中最下位。1人当たりの教育予算は英米など主要国とほぼ変わらない」としている』と、言及されている。
公表されたデータへのアクセスはこちらから。サイエンスポータル編集ニュースの『
2008年9月10日 国の教育支出対GDP比OECD加盟国中最低』。ここに、プレスリリース等のリンクがまとまっている。
で、『
OECD日本委員会 プレスリリース(日本語) (リンク先はPDFファイル)』を見ると、なかなか面白い。
報道とかぶる部分もあるが、抜き出してみる。
P.6より、
日本では教育機関に対する私費負担の割合がOECD平均を上回り、特に家計負担の割合が高い。
○ 教育機関に対する教育支出のうち公財政支出が占める割合はフィンランド、スウェーデンが95%を越える一方、韓国及び非加盟国であるチリが50%台である。2005年の日本の教育支出の公私負担割合は、公財政支出が68.6%であり、OECD各国平均85.5%を大きく下回った。一方、私費負担は31.4%であり、データが存在するOECD加盟国の中では韓国(41.1%)、アメリカ(32.7%)に次いで3番目に高い結果となった。(表B3.1)
○ 教育支出に占める家計負担の割合は22.0%と大きく、韓国に次いで2番目の水準である。特に、高等教育段階における家計負担の割合は、53.4%であり、データの存在するOECD加盟国の中で一番高い。
日本における私費負担の割合は、就学前教育及び高等教育において特に高い。
○ 日本では就学前教育における教育支出のうち55.7%が私費負担であり、OECD各国平均の19.8%を大きく上回る。高等教育においてはOECD各国平均との差は更に大きく、私費負担は平均が26.9%であるのに対し、66.3%となっている。一方、初等・中等教育への教育支出のうち私費負担は9.9%であり、OECD各国平均の8.5%を若干上回る。私費負担の中でも、家計支出の占める割合は、特に就学前教育及び高等教育において高く、それぞれ38.4%、53.4%が家計から支払われている(表B3.2a, B3.2b)。
P.7より、
日本では、授業料が高額であるのに対して公的な補助を受ける学生の割合が小さい。
○ 大学型高等教育機関における授業料と学生が受け取る公的補助との関係で各国を分類した場合、日本は韓国と同じグループに位置付けられる。このグループの特徴としては、大学型高等教育機関における授業料が高い一方(日本国内学生の平均で5,568ドル)、公的な貸与補助又は奨学金/給与補助の恩恵を受ける学生の割合がやや低い(25%)ことが挙げられる。これは、高等教育に対する公財政支出の対GDP比がOECD加盟国中特に低いこととも部分的に関係していると考えられる。(表B5.1c)
○ ただし、日本では学業成績が優秀だが経済的に就学が困難な学生に対する授業料又は入学金の減免制度があることについて留意する必要がある。
「授業料又は入学金の減免制度」が、ある、だけしか言及されていませんね。
遡ってしまうが、P.4より、
日本の教育支出の対GDP比は低下している。
○ 日本の教育機関に対する支出の対GDP比は、2005年には4.9%となり、2000年の水準(5.1%)と比べて低下している。 また、OECD平均の5.8%を大きく下回る(表B2.1)。
ところで、報道で触れられていないのだが、このプレスリリースでは、まず冒頭に「高等教育進学と男女差 」という項目があったのであった。
P.1より、
日本では、男性の大学進学者が女性を上回る一方、OECD平均では、女性の大学進学者が男性
を上回る。
○ OECD加盟国の中では、男性の大学進学者数が女性を上回る国は日本、ドイツ、韓国及びトルコのみであり、その差は日本が最も大きい。日本における大学型高等教育機関への進学率は男性が52%、女性が38%であるのに対し、OECD平均では男性50%、女性が62%である。(表A2.4)
…へーえ?
ついでに、同ページより
男女差は専攻分野の違いにも見られ、理工系分野に進学する女性の割合は低い。
○ 他のOECD加盟国と同様に、日本は保健・福祉分野及び人文科学・芸術・教育学において女性進学者の占める割合は高く、それぞれ62%、69%である。(表A2.6)
○ 一方、他のOECD加盟国とは異なり、生命科学・自然科学・農学分野及び社会科学・商学・法学・サービス分野での女性進学者の割合は低く、それぞれ31%、48%である。また、他のOECD加盟国と同様、工学・製造・建築分野を選択する女性の割合は非常に低く、13%に留まる。(表A2.6)
と、大変興味深い情報があったのである。
ちなみに、韓国での報道も拾ったので。
朝鮮新報 2008/09/10 10:44:11付
『
学校教育費の民間負担率、OECD加盟国で最高(上) (魚拓無し)』
韓国の学校教育費の民間負担率が、経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち、最も高いことが分かった。
学校教育費の民間負担率とは、幼稚園、小・中・高校、大学での教育費のうち、入学金、授業料、給食費など生徒や父兄が学校生活のために出費する費用のことをいう。民間負担率が高いほど、国の教育福祉水準が低いことを意味している。
(後略)
…同病相憐れんでしまう。。。
ところで、こんな報道の仕方をしているのが時事ドットコム 2008/09/09-20:28付。
『
教育への公的支出、日本は最下位=GDP比で3.4%-OECD (魚拓無し)』
(略)
日本のGDP比で公的支出が低いのは、GDPの伸びほどは教育に振り向けられていないためとみられるが、OECD教育局は「多く資金投入することが良い結果につながるかは疑問。日本は学習成果でベストパフォーマンスが見られる国の一つだ」と評価している。
………溜息をつきながら、『
こころはどこにゆくのか?』の2007-05-27付『
日本におけるリテラシー教育の不可能性』からの一節を引用させていただこう。
我々は教育にかけるお金の割合で言うと明らかに最低のグループに属しているにも関わらず、トップクラスの成績を叩きだしているということだ。
このカラクリはどこにあるか。私は、それが上に示したような日本の教育システムの洗脳性にあると言って良いと思っている。国力が貧しく、ヨーロッパに比べて近代化が立ち遅れた日本が世界に追いつくためには、極論すれば国民を騙してでも洗脳してでも勉強させる必要があった。そしてそれが今も続いているということではないのか。学歴信仰、教師=聖職者という祭り上げ、身分制の破壊と立身出世主義、管理主義詰め込み教育……様々に歪んだ近代日本の教育の風景の原点はおそらくそこに端を発し、未だにそこを抜け出せていない。どうしてやめないのか? それは簡単なことで、それが「最も安くて効果が上がる」ことは確かに事実だからだ。
…また、『 国際人権規約・高等教育無償化条項の留保撤回』等の情報については、当ブログ2008/05/31付の『
たまたま目にした財務省と読売新聞の教育観 』に、情報サイトのURLを集めておいたが、この件について勉強させていただいているbuyobuyoさんのブログの2008-05-21付『
そもそも「高等教育無償化」条項留保撤回を国連に勧告されてるんじゃないのか?』経由で知ったこの記事は注目だろう。
これは、世界の常識から見れば異常事態です。一九六六年に国連総会で採択された国際人権A規約の十三条二項(C)は「高等教育は…無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」と定めています。ところが、日本政府は、同規約を一九七九年に批准しながら、同項は留保し続けています。こうした国は日本、マダガスカル、ルワンダの三国だけです。
欧米諸国では、学費は無償か安価で、奨学金も返還義務のない「給付制」が主流です。高等教育をうける権利を保障するために、その無償化をすすめる――これが世界の流れとなっています。これに対し、日本は高等教育機関の私費負担割合が56・9%と、OECD加盟二十六カ国中三番目の高さです。各国平均21・8%より極めて高く、高等教育をうける権利保障という面で後進国となっています。
これが二〇〇一年の国連社会権規約委員会で問題となり、同委員会は、日本政府に対し、「高等教育の漸進的な無償化」条項の留保の撤回を検討することを勧告し、二〇〇六年六月末までに勧告にもとづいてどういう措置をとったのか、NGOや市民とどのような協議をしたのか、報告を要請しています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-11-01/09_01.html
この時点ではOECD加盟国は26ヶ国だったらしい。現在の
加盟国はこちら、OECD東京センターで参照できる。
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読売新聞 2008年9月10日03時12分付
『
公的な教育支出、日本は「最低」…OECD調査 (魚拓無し)』
(略)
調査は、2005年の1年間に幼稚園から大学までかかった教育費などを調べた。GDPに占める教育支出の割合は、OECD平均が5・0%。日本は前年比0・1ポイント減の3・4%で、統計がないルクセンブルクとトルコを除く28か国の中で最下位だった。トップはアイスランドの7・2%。2位以下はデンマーク、スウェーデン、フィンランドと続き、米国は16位だった。
こちらでの報道では、OECD教育局が「各国が教育予算を増やす傾向にあり、日本と差が開きつつある」と指摘しているという。
asahi.com 2008年9月9日22時50分付
『
教育への公的支出、日本最下位 家計に頼る構図鮮明 (魚拓無し)』
(略)
家計などから出される私費負担の割合は、小学校入学前の就学前教育と、大学などの高等教育で、加盟国の平均を大きく上回った。
私費負担も加えた教育機関への支出は、05年がGDP比4.9%となり、26カ国中20位。教育機関への支出のうち私費負担が占める割合は、初等中等教育は9.9%で平均の8.5%とほぼ同じだったが、就学前教育では55.7%(平均は19.8%)、高等教育は66.3%(同26.9%)となった。
家計支出に頼る割合が他国より大きく、OECDの担当者は「教育に戦略的投資をどう確保していくかが日本の課題だ」と指摘した。(後略)
朝日の報道ではきちんと、『公的支出をめぐっては、「教育振興基本計画」(7月に閣議決定)にGDP比5.0%まで引き上げると明記するよう文科省が求めたが、財務省などが反発。見送られた経緯がある』と、言及されている。
毎日新聞 2008年9月9日 21時31分付
『
教育予算:日本がOECD加盟国中最低 GDP比 (魚拓無し)』
(略)
政府の支出全体に占める教育支出の割合は9.5%で、OECD平均の13.2%を大きく下回った。日本の教育支出は、私費割合が31.4%(OECD平均は14.5%)と高いのが特徴だが、公費と私費を足した教育支出の対GDP比も4.9%でOECD平均の5.8%と開きがある。
OECDは「他国では教育支出が急上昇しているが、日本は教育以外の分野を選んで投資している。将来に向け教育にどう戦略的に投資するかが日本の課題だ」と指摘した。(後略)
毎日の報道でも『財務省は今回の結果についても「日本の子どもの割合はデータがある25カ国中最下位。1人当たりの教育予算は英米など主要国とほぼ変わらない」としている』と、言及されている。
公表されたデータへのアクセスはこちらから。サイエンスポータル編集ニュースの『
2008年9月10日 国の教育支出対GDP比OECD加盟国中最低』。ここに、プレスリリース等のリンクがまとまっている。
で、『
OECD日本委員会 プレスリリース(日本語) (リンク先はPDFファイル)』を見ると、なかなか面白い。
報道とかぶる部分もあるが、抜き出してみる。
P.6より、
日本では教育機関に対する私費負担の割合がOECD平均を上回り、特に家計負担の割合が高い。
○ 教育機関に対する教育支出のうち公財政支出が占める割合はフィンランド、スウェーデンが95%を越える一方、韓国及び非加盟国であるチリが50%台である。2005年の日本の教育支出の公私負担割合は、公財政支出が68.6%であり、OECD各国平均85.5%を大きく下回った。一方、私費負担は31.4%であり、データが存在するOECD加盟国の中では韓国(41.1%)、アメリカ(32.7%)に次いで3番目に高い結果となった。(表B3.1)
○ 教育支出に占める家計負担の割合は22.0%と大きく、韓国に次いで2番目の水準である。特に、高等教育段階における家計負担の割合は、53.4%であり、データの存在するOECD加盟国の中で一番高い。
日本における私費負担の割合は、就学前教育及び高等教育において特に高い。
○ 日本では就学前教育における教育支出のうち55.7%が私費負担であり、OECD各国平均の19.8%を大きく上回る。高等教育においてはOECD各国平均との差は更に大きく、私費負担は平均が26.9%であるのに対し、66.3%となっている。一方、初等・中等教育への教育支出のうち私費負担は9.9%であり、OECD各国平均の8.5%を若干上回る。私費負担の中でも、家計支出の占める割合は、特に就学前教育及び高等教育において高く、それぞれ38.4%、53.4%が家計から支払われている(表B3.2a, B3.2b)。
P.7より、
日本では、授業料が高額であるのに対して公的な補助を受ける学生の割合が小さい。
○ 大学型高等教育機関における授業料と学生が受け取る公的補助との関係で各国を分類した場合、日本は韓国と同じグループに位置付けられる。このグループの特徴としては、大学型高等教育機関における授業料が高い一方(日本国内学生の平均で5,568ドル)、公的な貸与補助又は奨学金/給与補助の恩恵を受ける学生の割合がやや低い(25%)ことが挙げられる。これは、高等教育に対する公財政支出の対GDP比がOECD加盟国中特に低いこととも部分的に関係していると考えられる。(表B5.1c)
○ ただし、日本では学業成績が優秀だが経済的に就学が困難な学生に対する授業料又は入学金の減免制度があることについて留意する必要がある。
「授業料又は入学金の減免制度」が、ある、だけしか言及されていませんね。
遡ってしまうが、P.4より、
日本の教育支出の対GDP比は低下している。
○ 日本の教育機関に対する支出の対GDP比は、2005年には4.9%となり、2000年の水準(5.1%)と比べて低下している。 また、OECD平均の5.8%を大きく下回る(表B2.1)。
ところで、報道で触れられていないのだが、このプレスリリースでは、まず冒頭に「高等教育進学と男女差 」という項目があったのであった。
P.1より、
日本では、男性の大学進学者が女性を上回る一方、OECD平均では、女性の大学進学者が男性
を上回る。
○ OECD加盟国の中では、男性の大学進学者数が女性を上回る国は日本、ドイツ、韓国及びトルコのみであり、その差は日本が最も大きい。日本における大学型高等教育機関への進学率は男性が52%、女性が38%であるのに対し、OECD平均では男性50%、女性が62%である。(表A2.4)
…へーえ?
ついでに、同ページより
男女差は専攻分野の違いにも見られ、理工系分野に進学する女性の割合は低い。
○ 他のOECD加盟国と同様に、日本は保健・福祉分野及び人文科学・芸術・教育学において女性進学者の占める割合は高く、それぞれ62%、69%である。(表A2.6)
○ 一方、他のOECD加盟国とは異なり、生命科学・自然科学・農学分野及び社会科学・商学・法学・サービス分野での女性進学者の割合は低く、それぞれ31%、48%である。また、他のOECD加盟国と同様、工学・製造・建築分野を選択する女性の割合は非常に低く、13%に留まる。(表A2.6)
と、大変興味深い情報があったのである。
ちなみに、韓国での報道も拾ったので。
朝鮮新報 2008/09/10 10:44:11付
『
学校教育費の民間負担率、OECD加盟国で最高(上) (魚拓無し)』
韓国の学校教育費の民間負担率が、経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち、最も高いことが分かった。
学校教育費の民間負担率とは、幼稚園、小・中・高校、大学での教育費のうち、入学金、授業料、給食費など生徒や父兄が学校生活のために出費する費用のことをいう。民間負担率が高いほど、国の教育福祉水準が低いことを意味している。
(後略)
…同病相憐れんでしまう。。。
ところで、こんな報道の仕方をしているのが時事ドットコム 2008/09/09-20:28付。
『
教育への公的支出、日本は最下位=GDP比で3.4%-OECD (魚拓無し)』
(略)
日本のGDP比で公的支出が低いのは、GDPの伸びほどは教育に振り向けられていないためとみられるが、OECD教育局は「多く資金投入することが良い結果につながるかは疑問。日本は学習成果でベストパフォーマンスが見られる国の一つだ」と評価している。
………溜息をつきながら、『
こころはどこにゆくのか?』の2007-05-27付『
日本におけるリテラシー教育の不可能性』からの一節を引用させていただこう。
我々は教育にかけるお金の割合で言うと明らかに最低のグループに属しているにも関わらず、トップクラスの成績を叩きだしているということだ。
このカラクリはどこにあるか。私は、それが上に示したような日本の教育システムの洗脳性にあると言って良いと思っている。国力が貧しく、ヨーロッパに比べて近代化が立ち遅れた日本が世界に追いつくためには、極論すれば国民を騙してでも洗脳してでも勉強させる必要があった。そしてそれが今も続いているということではないのか。学歴信仰、教師=聖職者という祭り上げ、身分制の破壊と立身出世主義、管理主義詰め込み教育……様々に歪んだ近代日本の教育の風景の原点はおそらくそこに端を発し、未だにそこを抜け出せていない。どうしてやめないのか? それは簡単なことで、それが「最も安くて効果が上がる」ことは確かに事実だからだ。
…また、『 国際人権規約・高等教育無償化条項の留保撤回』等の情報については、当ブログ2008/05/31付の『
たまたま目にした財務省と読売新聞の教育観 』に、情報サイトのURLを集めておいたが、この件について勉強させていただいているbuyobuyoさんのブログの2008-05-21付『
そもそも「高等教育無償化」条項留保撤回を国連に勧告されてるんじゃないのか?』経由で知ったこの記事は注目だろう。
これは、世界の常識から見れば異常事態です。一九六六年に国連総会で採択された国際人権A規約の十三条二項(C)は「高等教育は…無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」と定めています。ところが、日本政府は、同規約を一九七九年に批准しながら、同項は留保し続けています。こうした国は日本、マダガスカル、ルワンダの三国だけです。
欧米諸国では、学費は無償か安価で、奨学金も返還義務のない「給付制」が主流です。高等教育をうける権利を保障するために、その無償化をすすめる――これが世界の流れとなっています。これに対し、日本は高等教育機関の私費負担割合が56・9%と、OECD加盟二十六カ国中三番目の高さです。各国平均21・8%より極めて高く、高等教育をうける権利保障という面で後進国となっています。
これが二〇〇一年の国連社会権規約委員会で問題となり、同委員会は、日本政府に対し、「高等教育の漸進的な無償化」条項の留保の撤回を検討することを勧告し、二〇〇六年六月末までに勧告にもとづいてどういう措置をとったのか、NGOや市民とどのような協議をしたのか、報告を要請しています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-11-01/09_01.html
この時点ではOECD加盟国は26ヶ国だったらしい。現在の
加盟国はこちら、OECD東京センターで参照できる。
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No. 5149
正直、義務教育が大嫌いだった友人(全国模試5%上位に入る人)と教育問題に関して同意できないことの一つが「何故安くて効果が上がっているのか?」 という問題でした。教育の現場に問題が無いわけではない(友人すら苦痛でしかなかったと言っている)のに、彼女は「日本の教育はそれでも効果があるから、今の日本があって、現状に不満は無い」と言うのです。彼女にとって日本人は優秀だから、それでいい、という事のようで。それってファシズムに繋がるんじゃ? などと言ってはみていたのですが、数字の根拠やら、自分の言葉に確信があったわけでもなく。「何かが問題」だという感覚を説明できませんでした。それは今でも変わらないのですが(笑)、彼女がどっちを向いているかはわかりました。でも友人をやめようとは思わないのですけど(^^;。
No. 5153
>アオネコさん
ここで紹介した『こころはどこにゆくのか?』さんの記事、ものすごく納得しちゃいますよね(^^;
ゆとり教育ばかりが悪者にされて気の毒にと思ったりもします。下のものが、自分で考えて動くと困る人が、それなりの数いるんだろうなと思ったりも。
>「現状に不満は無い」
<
現状がそう悪くないとしても / 現状が小さな差であっても、この状況では、さらに教育格差が開いて固定しそうな危惧を強く感じております。
また、関連情報を見つけたらエントリにしたいと思っていますので、考察の元にしてくださいね。
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大阪府の橋下徹府知事が、学力調査結果を公表しろ、しないと予算配分を減らす、と府下の市町村を「脅して」いるんですって?
いえ、こう...
[2008/09/14 21:56]
URL
村野瀬玲奈の秘書課広報室
増田に書いた教育系ネタが広がりすぎて困惑している件
増田に書いた教育ネタについて、真面目に書こうとすると話が広がりすぎて増田で書けば迷惑になるレベルに達してきたので、こちらに場所を移すことに。 とりあえず以下返答。 (1)「教育って福祉?サービス業?」 について。*1 「教育には金をかけすぎている」→事実誤認。根
[2008/09/16 12:38]
URL
こころはどこにゆくのか?