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「お姫様とジェンダー アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門」 

若桑みどり氏の著書「お姫様とジェンダー アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門」
ちくま新書 2003/6/10第一刷 ISBN4-480-06115-0

若桑氏の文章は、これ以前に「ジェンダー白書3 女性とメディア」でも読んでおり、このテーマの講演案内が購読しているメルマガでも流れていたりしたので、古本屋で目に付いたのを機会に購入。
面白かったので一気に読んでしまった。

この本は、著者の勤務する女子大で行った「高校を出たばかりの女子大生に教えているジェンダー学入門」の講義をそのまま書籍にしたのだそうで、ジェンダーの参考書としても良いし、ある意味メディアリテラシーの参考書としても良いように思えた。
本書では、まず、ジェンダー学の概要が述べられた後、プリンセス・ストーリーとジェンダーの関わりについて述べられ、その後「白雪姫」「シンデレラ」「眠り姫」の某アメリカ企業製のアニメーションを用いた講義の概要・学生から寄せられた意見・総括で構成され、その後に映画「エバー・アフター」についても軽くふれられている。

ジェンダー学の概要では、
「(前半略)女性は子供を産むという身体の機能をもっているために、もっぱら子供を産み、育児や家事をするものであると決められ、そのために家庭という「私的領域」に囲い込まれることになった。(中略)女性が自立できるような確かな職場や働く条件が確保されなければ、結婚するしかないし、その方が楽でもある。さらに、教育や文化やメディアが、「お嫁さんになる」とか、「素敵な結婚」とか、「母になれない不幸な女」などとくり返せば、どうしてもそれが幸福の唯一のすがたにみえてくるから、喜んでそこへ行くようになるからである。そのように、無意識の心の底にまで浸透してしまった、目に見えない社会の教育を、「刷り込み」と呼んでいる。
(中略)女性は「女らしい」ことが、男性は「男らしい」ことが要求または強制されており、個人の自分らしさ、つまり個人の特性を生かすことは、その特性がそれぞれの性の「らしさ」に造反するかぎり、非常に難しい。」(P.12ー)
あるいは、
…親が子供に期待する「こんな人になって欲しい」という希望は、男の子に対しては「たくましく責任感のある」女の子には「素直で思いやりのある」というのが一般的。女の子に要求される思いやりとは『自身の要求よりも他者の希望を優先して進んで自己犠牲すること』、素直とは『自分の主張や意志を抑えて他者で従順であること』が含意としてある。何らかの仕事を成し遂げるためには責任感とたくましさが必要だが、それよりは、他者の要求に従う事と他者に奉仕する事が、女性には望まれ、あらかじめその規範で縛ってある。女性にかけられたこの縛りをコレット・ダウリングは「シンデレラコンプレックス」と呼び、それは他者に自分の人生の幸福や方向性をゆだねようとする傾向とされる。建前上の男女平等が実現されても、内面の縛りは無くならない。…(P.30周辺、概略)
と記述し、その「刷り込み」としての道具である「プリンセス・ストーリー」の存在が暗示されている。

また、さらに、大人が子供…この場合は特に女の子に提供する夢として「お姫様の物語」でいいのかと、著者は疑問を呈している。なぜなら、プリンセス・ストーリーとは「叶わぬ夢」だからだ。そもそも、封建時代の王の娘として生まれちゃいない(笑)のだし、結婚相手としての王子様も現れるわけ無いのである。お姫様・王子様が寓意といっても、「プリンセスとなって王子様と結婚しようと思った女の子の夢はあらかじめ幻滅に向けて用意されたもの」、その決して実現しない夢が大人によって商業利用されている事は、問題ではないのかというのが、若桑氏の投げている問だった。

そして、お姫様は待っているだけ(になるように教育されるのだが)なのに、困難を克服してお姫様の元にたどり着くのは王子様の役割である。すなわち、ここで、ジェンダー視点によって男性にかけられた縛りに関しても記述される。
 男性が、「責任感」「たくましさ」を個性と関わりなく一様に期待されている現状は、男性それぞれの自身の個性に沿った生き方を阻害しているという点では女性の場合と同様。男性中心に構造化されている現代社会においては、男性はいろいろな局面で女性より優位に立ちがちであるとはいっても、個々の男性の多くはそれによって常にトクをしている訳ではない。それどころか、男女平等理念が提示され、女性の社会進出が進んできた現状では、男性はある意味、二重の不利益に立たされている側面もある。
 一つには、これまで「男の世界」出会った職域に女性が入ってくると言うことは、張り合うべきライバルが二倍になるということ。そして、家庭のみならず職場でも、陰で支えてくれることが前提となっていた存在がその役割を断ってくる場合(お茶くみ拒否とか、家事分担要求とかね)もあり、今まで自明であったはずの補佐役割の存在をなくすのだから、男性にとっては変化を受け入れるのは容易では無いのも不思議ではない。
 またもう一つ、就職の際などに明らかなように、競争から降りる選択肢が明確に存在する女性に比較して、競争から降りられる選択肢が難しい男性には、ジェンダー規範が男性にとっては不寛容であり女性にとって寛容という側面もある。

なのに、プリンセス・ストーリーをすり込まれた女性から(叶わぬとは知りつつの)「王子様」役割を期待されたりする訳だ。
大変ねぇ。
とは思うんだけど、でも、こっち側のプリンセス・ストーリーの呪いをあぶり出す方を優先したい。


さて、特に、某アメリカのアニメ制作会社の発信する「白雪姫」「シンデレラ」「眠り姫」のアニメーション。
共通点があるそうだ。
まず、プリンセスは美貌の持ち主。
これが最も重要。なんといっても「王子様はお姫様の美しさにひとめでむちゅうになり結婚をしたいと思いました」がプリンセス・ストーリーの眼目なのだ。ちなみに、何故か「白い肌」も必須条件である。
次に、「お姫様身分」の筈なのに、白雪姫とシンデレラは、どうしたことか家事が得意。
そして、可哀想な境遇である事も必須。ただし、そこから自力で抜け出そうとしてはいけない。ひたすら耐えるか寝るべし。

これを、若桑氏は「ジェンダー白書3 女性とメディア」に寄せた文章でプリンセス・ストーリーに含まれたメッセージとして、以下のようにまとめる。
_______________________
1,家事労働と女性の不可分の結合。
2,他律的な女性の人生設計…理想の男性を待ち、これと結婚して、その地位財産を自分のものにすること。これが女性の「幸福」であるという信念。
3,性的魅力が幸福の必須条件であること。

プリンセス・ストーリーは女の子に向けて、「何が何でも美人になれば人生は成功」とすり込む事になる。(中略)プリンセスストーリーは人類の半分を性的な客体にすることに大成功したことになる。
_______________________
…そうして、街頭で配られる無料雑誌にはエステ情報があふれかえり、電車の中や路上で化粧しまくるお嬢さんが目に付く訳だ(この前、どう見ても60代後半ぐらいの女性が、地下鉄の中で化粧をしているのを見た時にはさすがに驚いてしまった)。


美貌と従順さがあれば、王子様が現れて幸福な結婚ができるという女性の生き方を教えるプリンセスストーリー。
「可愛らしく、か弱く保護が必要であれ。悲惨な境遇であっても自ら決断して抜け出すための努力をする必要はない、なぜなら耐えて待っていれば王子様が現れて救ってくれるから。」
幼い女の子にそういったメッセージを伝えているのがプリンセス・ストーリーだが、さらに、もう一つのトリックが含まれると若桑氏は述べる。

 お話が結婚式で終わるのだ。
 結婚した後の幸福の作り方は、プリンセス・ストーリーには含まれない。
しかも、結婚式の瞬間のお姫様は若く美しいわけで、、、そもそも王子様はお姫様の「美しさ」に惚れた訳なんだから、、、ところが、結婚後、年とともにお姫様の美しさは減じる。人生では、若くもなく美しくもない期間の方が長いというのに。
プリンセス・ストーリーによって、若さと美しさで幸福を勝ち取ったお姫様に自分を投影してしまう女性達、女性の価値とは美しさとすり込まれた女性達は、若さを失う事に伴って美しさを減じる時、自分の価値も減じたと感じ、その時に「自分って何?」と悩む。とりわけ、若さと美しさが女性の価値を決めている社会では。

そして、お姫様は、白雪姫の継母になる。
「女性の分断、つまり従順で性的魅力がある女性と、老いているか醜悪で、性的魅力、または生殖機能がない女性(淫乱な女性もこのグループに入る)とに女性を二分して、前者を賞揚して成功と幸福に導き、後者を断罪して不幸と破滅に落とすという、男性社会の『言説』の戦略」(P.93)は、若桑氏の授業によって女子大の学生さんの多くに(内面化されながらも)気づかれていたそうだ。しかし、某都知事も無邪気にその価値観を振りかざしているし、近頃では某法務相辺りもそういた価値観をもっている事を類推させる発言があったようにも思う。この手の価値観が、この社会に根付いているのは、うんざりしながらも意識せざるを得ない。

…白雪姫の継母が、自分の美しさを問いかける鏡は「男性社会の視線」という説明には、なるほど、だ。
そんな情報を仕入れて、ふと、日曜日朝のテレ朝系のアニメを見ていると、、、「古代王者 恐竜キング」なるものがやっているのだが。
ここに出てくる悪役が、タイムボカンシリーズの、マージョ・ワルサー・グロッキーをイメージしたとしか思えないトリオである。この、マージョ様に対応する女性キャラ(名前忘れた)が、「おばさん」の言葉に過剰反応する設定を与えられているのだ。こんな所でも、こういった価値観を、さらに若い世代の(この場合は)男の子に刷り込んでいる訳か。。。


そういう訳で、もともと別に好きでもなかった(笑)某アメリカ企業製アニメだけど、ますます視線が厳しくなってしまった。
見るとしてもツッコミネタ探しになってしまいそうだ。
で、〆に、若桑氏が紹介する学生さん達の意見というかツッコミで面白かったのをいくつか。
「妖精がこなかったら、シンデレラは幸せにならなかったのか?」
「シンデレラの王子様が愛したのは、シンデレラではなく小さい足だったのだ」
「白雪姫を殺すよう、継母が家来に命じた時に、家来は「あんな可愛い子をですか?」と訊き返す。つまり、ブスなら殺せた?」
…私、「もののけ姫」でアシタカがサンに「生きろ、そなたは美しい」っつったシーンで、おいこらちょっとまてブスならとどめ指したって事か?とつっこんじゃって、その後見るの止めたよなぁ(遠い目)。
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[ 2007/04/15 13:54 ] ジェンダー関連? | TB(0) | CM(4)

面白そうですね!   No. 676

さっそく買って読んでみます。

現代の「おとぎばなし」って殺菌されすぎ!って思います。
やっぱシンデレラの姉たちには、指を切り落としてでも靴に自分の足を合わせる執念を見せてほしいし、王子様と結婚したシンデレラは、継母と姉たちに容赦ない復讐をしてくれたほうが、人間ってものに迫れると思うのですが。

白雪姫も、原典では継母ではなく実母。
この物語は、母娘問題を読み解くのに、非常にわかりやすいサンプルです。
[ 2007/04/15 19:28 ] SFo5/nok[ 編集 ]

>水葉さん   No. 677

学生さん達の、生き生きした感想は面白かったですよ。
王子様の地位目当てのシンデレラも姉たちも、所詮同類じゃん、みたいなのもありましたから。
現代的に殺菌されたお話ながらも、そういえばそうですよね(笑)。

白雪姫の母娘関係もきっちり記述されてましたよ。
[ 2007/04/16 12:17 ] fYTKg7yE[ 編集 ]

はじめまして   No. 683

時々ROMさせていただいている一主婦です。
私が思うに、ジェンダー理論の失敗の一因は、
「自分で感じる、自分で決める」ものであるはずの「幸せ」を、第三者が定義しようとしたところにあるような気がするんですよね。

たとえば、碧猫さん引用のアシタカのセリフ「生きろ、そなたは美しい」にしても、アシタカはなにも「絶対基準で美しい」と言っているわけではないと思うのです。
サンは、あくまでも「自分にとって」美しかったのではないでしょうか。
そして、好きな人は美しく感じるものです。
つまり、これはある意味「愛の告白」ではないでしょうか。そう考えると感動しませんか。
[ 2007/04/17 13:10 ] ffrl57rc[ 編集 ]

こんにちは   No. 684

>Lightさん

はじめまして。
言及してくださった「もののけ姫」の台詞に関しては、エントリー内では(長くなりますので)触れませんでしたが、そもそも、アシタカが部外者であるのに関わらず、背景事情も把握しないままに、争っている他者の一方に荷担した経緯がありましたからね。その時点で、軽薄な行動に批判的になっておりました。
また、サンが、クラリス・ラナ・ナウシカと同じ顔、つまり宮崎アニメ正当派美少女の顔をとして「絶対基準で美しく」描かれてしまっているわけです。サンが、あの顔で描かれていなければ、Lightさんの深い解釈に首肯の余地があったと思います。
まぁ、正当派美少女以外の顔でヒロインを描くと、興行的な成功が難しくなるでしょうけどね。


それと、私はジェンダー概念が破綻していると思っておりませんので、Lightさんご指摘の「ジェンダー理論の失敗」がどのような側面を指しているのか解りかねています。ジェンダーという概念が『「自分で感じる、自分で決める」ものであるはずの「幸せ」を、第三者が定義しようとした』とは、私は考えていませんし。
私のジェンダー概念関係の理解は、こちらでの説明に沿っておりますので、もしよろしかったらご一読いただけますと幸いです。

http://seijotcp.hp.infoseek.co.jp/genderfreeQandA.html
http://macska.org/article/138
[ 2007/04/17 19:21 ] fYTKg7yE[ 編集 ]

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