家族達は、前にも書いた通り「捨てられていた」子達ばかりだ。ただし、一匹を除いて他の子達はみんな、個人間のやりとりで「うちの子」にしたので、いわゆる「捨て猫」ボランティアさん経由で「うちの子」になったのは、お嬢のみだ。
さすがにこれは極端だが、里親募集サイトではこれに近い譲渡条件を掲げているところが多いのも確か。お嬢を引き取る前、里親募集サイトを見て回り、こんな条件に当てはまる立派な里親希望者って、いったいどれほどいるのだろうと素朴な疑問に駆られたものだった。もちろん、私がこの条件を満たしているはずもない。
にもかかわらず、お嬢は「捨て猫」ボランティアさん経由で「うちの子」になっている。何故可能だったか。答は単純で、そんな厳しい条件を掲げたボランティアばかりではないのだ。
あるきっかけでもう一匹、猫を家族にしようと思った時、折悪しくというべきか立ち回り先に子猫は落ちていなかった。また、例え落ちていたとしても、感染症をもっている
(かもしれない)子猫を、体の弱い先住猫のいる環境に連れてくるのは不安がありすぎる。そんな背景がある里親希望者である私は、ネットの里親募集サイトをかなり見て回った。しかし、えらく厳しい募集サイトの条件を掲げたサイトばかりが目に付き、引っかかる条件が一つではない私としては、里親募集サイト経由で子猫を引き取るのは無理だろうかと思い始めていた。ありがちな条件では「持ち家に家族形態で暮らしていて猫のお留守番なし、譲渡契約書を締結あるいは誓約書を提出して引き渡し」なんてあるのだが、この条件、いったいどれだけの人がクリアできるのだろう?
しかし、諦めずに見て回る内にいくつかの募集サイトでは、そこまで厳しい条件は掲げていないことに気がついた。緩い目の募集サイトでも残る条件は「外飼い不可」「賃貸なら飼育許可を取っていること」「不妊・去勢手術の義務づけ」「可能な範囲で近況報告」、「猫はボランティア側が自宅まで届け、その際に飼育環境を確認」ほど。これらはせっかく送りだした猫が幸せに暮らせているかが気になるなら、前4つは当然、後の一つは仕方ない範囲だろう。そういうサイトは厳しい条件を掲げていなくとも、いい加減なボランティアとは思えず、サイトの記述はポリシーがしっかりしている。
そんなサイトをいくつかブックマークに入れ、募集状況を見守っていた。そしてある日、その子猫が掲載された。虐待にあっていたそうで「人見知りをする」との注釈付きで、金色の目が印象的な、雉虎の模様がはっきりした大きめの子猫がケージの中で縮こまっている写真が付いていた。
募集サイトを見ている内に傾向が解っていた。雉虎って結構人気者らしいから、コンタクトは早くしたほうがよさげなのだ。この時、いろいろと他の要因も重なっていて、気がつくとメールを発信していた(^^; そして翌日、ボランティアさんから返信が来、その日のうちにお見合いの段取りが付いてしまった(^^;;;
先方の指定した駅で待ち合わせ、彼女が保護されている所へ向かった。ケージの中に縮こまっていた大きめ子猫だったが、攻撃的でもなく、
(逃げ場がないにしても)私の手を避けずに温和しく撫でられ、じきに腹見せ状態になった。また、他にも保護されている猫たちが結構な数いたので、私は特に何を考えていた訳でもなかったのだが、全員に挨拶して回っていたり、、、といった行動は、よく考えればボランティアさん達の前でしていたのだったりする。どう見ても、持病「猫好き」であったろう。
もちろん、私自身の猫歴を含むプロフィールも明かしていた。そして、先住猫の存在と、先住猫の相性がどうしようもない最悪の場合はありうるし、その時は戻すことを相談する場合もあり得ると、あらかじめ考えていたことを正直に申告した。
…そういうマイナス要因も申告したのだが。ボランティアさん達のノリは、完全に
葱を背負った鴨がやってきた縁組み成立バンザイ状態になっていた。あの、最悪の場合には戻すことを相談するって私言ってるんですけど、聞いてます?ってな状態に。押し切られてるような気がしつつ、基本的に交渉成立状態なのでその後は雑談タイムに移行し、このボランティアさん達のスタンスがだんだん解ってきた。核のお一人を中心に、複数の人たちで長く活動している様子であり、かなりの頭数の猫たちの面倒を見ている
(見てきた)こと。行政から、対応が難しい案件を持ち込まれる様子であること等々。
そして雑談の内に、「この前、保護した猫たち」の行き先の話がでた。その時点まで住んでいる場所にいられなくなった成猫を含む多数の飼い主のいない猫たちを、去勢・避妊手術の後に、何処やらの地方競馬の厩舎住まいの外猫として送り込んだと。
え?と思った。このボランティアさん達は、里子として出す条件としては「外飼い不可」は確実に掲げていた。そういう行き先、有りなの?
言葉には出さず、引き続き話を聞いていて、、、納得した。仲介する頭数が多ければ、無駄に厳しい里親募集条件など掲げて入られまい。「一握りの猫に最上級の幸せを」ではなく、できるだけたくさんの猫を可能な限り幸せにする事を優先していれば、一応の里親募集条件を掲げてはいても、送りだす例全てに杓子定規に適用はできまい。外で成長済みの個体なら、去勢避妊手術のみして元の場所に戻すことも結構あるらしい。男性独り暮らしの里親さんも、普通にいるようだった。
柔軟に個体ごとの幸せを可能な限り考えた取り組みを選択すれば、こうなったのだろう。
翌日が、お嬢を受け取る日となった。
このボランティアさん達も「飼育環境の確認」を里親の条件に入れていたので、部屋を片付けてから、待ち合わせ場所に向かった。…のだが。待ち合わせ場所に車で現れたボランティアさん、私の住む賃貸集合住宅の前まで車で送ってくれて、お嬢の入った籠を渡して言ったものだ。
「部屋の確認、必要ないです。どんな方かは解りましたから」
…え?
そして思い返すと、連絡先の記帳はしたが、譲渡契約書だの誓約書だのを取り交わしてもいなかった。思わず、ほぼ同じタイミングで猫を家族に迎えた友人との間でメールが飛び交う。友人は、ボランティアさん経由で猫を引き取ろうとして、結局、あまりのご無体な条件に断念し、別口から猫を迎えたという。そうして、それぞれが実地に体験した情報や聞き込んだ情報が飛び交い、ボランティアもいろいろ、という、あまりにも当たり前の結論に達したのだった。
そんな経緯で我が家にやってきたお嬢。これは到着後、丸二日時点だったか。
このポーズが一番、子猫らしいプロポーションのような。
当初最も心配したのは、先住猫である坊っちゃんとお嬢の折り合い。互いに初対面で噴きあっていた後、お嬢の視線が坊っちゃんの長い尻尾に固定されていたのだが、、、
思わずチャイチャイしたくなったあたりから、二匹は急速に仲良くなったようだった。
この時は冬真っ盛り。なんといっても、人間と先住猫が仲良くストーブ前なんかの暖かい場所にいる訳で、お嬢が単に寒かったのもあるだろう。
微妙な距離… お嬢の方が、坊っちゃんに近づいていくようになった。
背中合わせだったり 最初は
ヘタレな癖に生意気にも噴いて威嚇
の真似事をしていた坊っちゃんも、本来の温厚な性格で受け入れた後は、どんどん距離が縮まって、猫団子化したのは2ヶ月もかからなかったと記憶している。
そして今や。
完全に当たり前のような顔をしている二匹なのであった。
この二匹の折り合いがいいのは、互いの相性があったのは確かだろう。でも、それだけではなかった。お嬢は、怖い目に遭いながらの路上生活中に捕獲されて、ボランティアさんの元で2ヶ月を過ごしていた。その間、人間が怖い存在ではないと教えるのと同時に、一緒に保護されていた里親募集中の先輩猫たちの内、面倒見のいいお兄ちゃん猫のケージに入れて一緒に遊ばせたり等の馴致もしていたそうだった。
複数飼いの環境になることも見越し、他猫と仲良くできるかどうかも把握した上での里親斡旋だったのだ。その事に気づき、本気のボランティアの人たちだったのだと、敬意の念を新たにしたものである。
そんなお嬢の今。
スリスリ~^^
注;
ボランティアの方の多くが、このエントリで書いたような取り組みをしているという話でも、していないという話でもありませんので、念のため。それぞれいろいろの一つの例です。