子供の頃から、母親が作ってくれたメニューの一つに「かんとうだき」なる料理があった。これに関しては、いろいろネタにしたい件があるのだが、都合により近日中に別エントリにすることにして此処では割愛する。
この「かんとうだき」に必ず入っている具が、「すじ」であった。この具、私はずっと「すじ」と呼んでいたし、世間一般でもそうだと認識していた。根拠は、親兄弟・親戚もそう呼んでいたから、のはずだ。そして、友人知人に対しても「すじ」といえば、誤解無くそれであるとして概念が通用していたから、世間一般でも「すじ」といえばアレのことだと考えてきた。
だが、東京に移住して以来、もしかして私の認識は関西あるいは大阪ローカルな認識かもしれないとの疑念が生じてきた。職場で雑談する人たちや、テレビでしゃべっている人たちが、それのことを「牛すじ」と呼んでいたからだ。
しかし、である。「すじ」として販売されている品が、もれなく牛の腱を含んだ堅い部位の肉であれば、わざわざ「牛」をつけて「牛すじ」と呼ぶ必要はないのではないか? 疑念に駆られた私は、職場でよく雑談する事務職の女性相手に議論を試みた。しかし、この時の議論相手は、わざわざ「牛」を付ける明確な理由に心当たりはなく、単に慣習的に「牛すじ」と呼ぶとのことであった。こんなしょうもない事で議論をふっかけられるのは大変な災難ではないかと、ふっかけた本人が思わないでもないが、しばしば、「既に加工品であり、そのまま食べて美味しい練り物
(例;竹輪、蒲鉾、はんぺん等)を使い、更に一手間加工した料理を作製するのはエネルギーの無駄遣いではないか」といった、しみじみしょうもない御題の議論をふっかけることもあるので、先方は既に慣れっこだと思われる。
さて、「すじ」として販売されている品が、見渡す限り牛の腱を含んだ堅い部位の肉であるのに、わざわざ「牛すじ」と呼ぶ必要があるとは思えないという疑念は、身近な議論では解消されなかったが、その疑念を持ち続けた私には、ある日、敗北の日がやってきた。
こんなものが、東京には売っていたのだ。
もしかして、大阪にも売っていたかもしれないが、私は見たことがなかった なるほど、こんなものが売っている以上、単に「すじ」と呼んだだけでは、牛肉の腱を含む部位か、おでん種の練り物である「すじ」であるかの区別は付かない。しばらくの間取り憑かれた疑問が解消されて、なんだか原因の分からない気分の良さを感じていたが、だが、だったら「すじ肉」で良いのではないかという、新たな疑問が発生してしまった。
そんな新たな疑問が発生していた私には、更にしばらくしたある日、完全敗北の日がやってきた。いつも行くスーパーでこんなものが売っていたのだ。
これまた、大阪に住んでた頃は、私は見たことがなかった 腱の部分なんて、牛にしかないわけはなく、当然豚にもあるはずが売っていないなぁと思っていたのだが、何と、実際に売っていたのだ。しかも、とてもお手頃値段で^^ 当然、即座に買ってきて、大根やこんにゃくと一緒に煮てみたが、、、すじ肉の味と、豚肉の味がした
(物凄く当たり前の味覚である(^^;)。この豚すじ、常に置いているわけではなく、この数年で数えるほどしか出逢えない稀少品である。しかし、現に「豚すじ」がある以上、牛の腱をふくんだ肉を単に「すじ」やら「すじ肉」と呼んでは、正確な呼称とは言えまい。なるほど、今後はきちんと「牛すじ」と呼ぶべきであると納得したのであった。
そして、更にその後。
所用で信州に訪れた折、目についた馬肉料理店に入ったのだが、メニューにあったのが「馬すじ」の煮物。これがまた、もんのすごく旨かったので、すっかり気に入ってしまったのだった。
やっぱり、すじ肉も、きちんと牛か豚か馬かを区別しなければいけない。こんなしょうもない事でも、事実を確認して納得できるのはなんとなく嬉しいものである。
って、エントリにしちゃったよ、こんなしょうもない話(爆)
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