23日から始まっている、国連・女性差別撤廃委員会第44会期の日本審査だが、審査前に日本政府だけではなく、NGO等も委員会に報告書を提出している。
日本婦人団体連合会(婦団連)のリポートは、貧困と格差の広がりが女性に重くのしかかっていることを批判。とくに日本政府の社会保障切り捨ての政策が女性の社会進出を阻害する要因となっていると指摘しています。
審査前の22日には、NGOと委員との会合が開かれ、
主催したのは、42の女性団体でつくる「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク」(JNNC)。84人が傍聴のためニューヨークを訪問し、ロビー活動を行っています。この日の会合には13人の委員が参加。各団体の主張に熱心に耳を傾けました。
国連人権理事会の時に見た情報だったか、審査の際、日本のNGOが多数傍聴に来たことについて、委員が驚いたそうだ。そんなに、NGOからみて信用ならない報告しか日本政府はしないのか、と。審査する側から見たら、多数のNGOが来ていること自体、その国は要注意信号なのだろう。
JNNCを代表して国際女性の地位協会の大谷美紀子弁護士が発言。民法の差別的規定の改正や日本軍「慰安婦」問題の最終的解決など、前回の審査で勧告された内容が実行されないままだと指摘しました。
事前の報道はしんぶん赤旗ばかりだったが、24日になってから他社の報道も出てきた。日本政府は「頑張ってます」と主張していたという
(<-超大雑把な要約)。
日本側は05年に男女共同参画社会基本法に基づく基本計画を作成し、20年末までにあらゆる分野で指導的地位をしめる女性の割合を30%にするなどの数値目標を設定していることなどを説明。議定書批准については「検討中」と繰り返した。(略)
日本から女性差別に取り組むNGOのメンバー84人が審査を傍聴。代表世話人の山下泰子さんは「政府側は何度も同じ答えを繰り返し、はがゆい思いがした」と不満を語った。
23日行われた日本についての審議では、日本政府代表団の団長を務める南野元法務大臣が「日本の男女参画が国際的に見て遅れていることは否めません」と認めたうえで、2005年には1.7%だった国家公務員の課長級以上の管理職を来年までに少なくとも5%に引き上げるとする政府の目標などを説明しました。
審議後、記者会見した内閣府の岡島敦子・男女共同参画局長は05年に策定した第2次の男女共同参画基本計画など「日本の取り組みは進展している」と強調した。
…日本政府代表団・団長は、南野元法相。あの方とは(^^;
「慰安婦」問題について、日本政府側は、
03年の勧告では従軍慰安婦問題へのさらなる対策を求めたが、日本政府は今回も謝罪は解決済みで、補償でも「アジア女性基金を活用」など従来の意見を繰り返した。
…03年に「さらなる対策」を求められた際の主張を「今回も」って、認められるわけもないのだが。とりわけ、2007年のアメリカ下院以来、各国・国際組織・日本国内の地方議会の働きかけがどれほどあったことか。委員が、なめとるのかと思ったとしても無理はないだろう。
各委員から「日本は条約に拘束力があると理解しているか」「具体的対策を欠くのでは」などと厳しい意見が相次いだ。
民法改正などの対応も進んでいないことから、「日本では(法的拘束力を持つ)条約が単なる宣言としか受け取られていないのではないか」と批判する委員もいた。
各国の委員からは「民間企業の総合職に就く女性の割合が全体の5%強しかいないという事実は間接的な差別ではないのか」などといった厳しい意見が相次ぎました。
委員からは「条約が単なる宣言とみなされ、国内法に十分組み込まれていない」と批判的意見が相次ぎ、従軍慰安婦問題での謝罪や性暴力を描写したゲーム対策を求める声も上がった。
…ちなみに、「
国際連合女性差別撤廃条約選択議定書の批准等に関する質問主意書」(第159回国会 平成十六年六月十一日)で知ったところによると、「男女共同参画会議の苦情処理・監視専門調査会」の平成16年7月28日付「国際規範・基準の国内への取り入れ・浸透について」で、「
女子差別撤廃委員会の意見や勧告は法的拘束力がないから誠意を持って考慮すれば足りる」と明記されてあったりするのだが
(答弁書は「それ、選択議定書の話」と書いてあるようであったが、条約にはあっても委員会勧告にはないと読めるような)。
そうして、
これに対し委員側は、個人による通報制度を定めた「選択議定書」の批准が重要だと指摘、民法についても「多くの分野で差別的条項を含んでいる」と批判した。
審議のあと、スロベニアのノイバウアー議長は「日本政府は政策の見直しと、さらに有効な対策と努力が必要だ」と述べ、近く日本政府に対して問題点の改善を求める方針を明らかにしました。
日本は前回、2003年の勧告で対策遅れを指摘され、是正を求められている。委員会では今回の審議を受け、8月下旬にも日本政府に勧告を行う予定だが、迅速な取り組みを再び求められる可能性がある。
ちなみに、2008年10月の国連自由権規約委員会の実施状況に関する日本審査の時には、
日本政府は現行制度を維持する型通りの答弁に終始。閉幕に当たりポサダ委員長は「委員会はフラストレーションを感じたと思う。前回の政府見解から十分なフォローアップや(人権状況の)改善がなされていない」などと総括した。
10年前の審査からほとんど何の進展もないまま同じ質疑が繰り返される状況に、委員たちはそろってフラストレーションを表明し、「まるでデジャビュ体験」「いったいこのプロセスをどう考えているのか。時間の無駄だし、失礼」「日本政府は規約に関して基本的な思い違いがあるのではないか」など、日本政府に対し、かなり辛らつな批判がなされました。
この時の、自由権規約委員会の委員も既視感体験をしたらしいが、私も、今現在している。
「行き過ぎた男女平等」などと面白いことを主張する人達がいるにもかかわらず、問題は山積みなのだから。
賃金の男女格差も審査の焦点です。
政府報告書も「(男女)格差は、国際的に見て大きいと認識している」とのべています。しかし、実際の格差解消へのとりくみは、「労使が自主的にとりくむためのガイドラインの作成」などにとどまっています。(略)
女性にたいする賃金差別については、ILOの監視機構の一つ、条約勧告適用専門家委員会からも、繰り返し意見が寄せられています。(略)
女性のフルタイム労働者の時間当たり所定内現金給与は〇四年で男性の68・8%だったのが、〇六年には67・1%。製造業では男性の58・9%、金融保険業では54・8%です。
…賃金格差どころか、昨今は育休切りだし。
追記;アジア女性資料センター様でも記事が出ていたので。
国連のプレスリリースによると、国内NGOが指摘していたほとんどの問題が審査でとりあげられたようです。(略)委員たちは、女性差別の定義を明確にし、女性差別撤廃条約の内容を日本の国内法に完全に取り入れることをはじめ、より具体的で積極的な取り組みが必要だと指摘しました。審査では、以下のような問題が指摘されました。
・女性差別の定義が欠けていること、間接差別の定義が不十分であること。
・差別的な民法規定が残っていること。
・CEDAWの規定が国内法において完全に法制化されていないこと。
・選択議定書の批准の必要性
・裁判官や公務員のジェンダートレーニングの必要
・日本軍「慰安婦」問題の真摯な解決
・女性蔑視的なポルノゲームの氾濫
・公人の女性差別発言
・男女共同参画機構や共同参画基本計画の効果
・性的搾取を目的とする人身売買や研修生問題
・婚姻内レイプ、児童に対する性的虐待、DV、性暴力、セクシュアルハラスメントなど、女性に対する暴力防止対策
・意思決定過程への女性参加
・学校における性教育
・男女賃金格差、女性の不安定雇用、同一価値労働同一賃金原則の確立、育児休業制度の整備など
・マイノリティ女性や移住女性の教育や雇用へのアクセス、支援策
指摘点は、全部強調したいところではあるが、涙を飲んで一部のみ強調してみたのだった。
参考;
2009/03/23付「
女性差別撤廃委員会第44回会期が2009年7月から」
2009/06/04付「
無いと思って見る目に差別は映らない」
国連の日本審査に関するプレスリリースはこちら。
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