中国で、北宋と遼と西夏が割拠していた昔の、ある時代。
当時の西夏王には、一人の娘がいた。どうやら兄弟姉妹がいない一人っ子だったようで、西夏王は、この公主に婿を取らせて跡継ぎにしようとの基本構想をもっていたと思われる。
ところが、どうしたことか、公主は夢に見た殿方が忘れがたいと駄々をこねる。
この夢というのは、公主がふと夜中に目覚めると、裸で氷室の中の寝台にいて、そばには男がいて、、、寒いと称してその殿方の服を脱がせてすることをしちゃって、相手の殿方を「夢郎」と呼んで公主は「夢姑」と呼ばれていたという夢の筈だが、公主がどこまで父王に打ち明けたかは定かではない。しかも、これ、どうしたことか夢ではなくて、寝ていた公主が妖しい童姥に誘拐されて裸に剥かれて、その童姥が破戒させたかった若い僧侶の寝台に置き去りにされたのが真相なのだが、、、公主はさすがに夢で見た殿方が忘れがたいと思い込んでたんだろうな(深窓の
(多分)お姫様がそういう状況で、あーゆーリアクションというのも凄いが)(^^;
…まぁ、どこまで、お父様に打ち明けたかは定かじゃないにしても(^^;
実際にパパが婿探し企画に乗り、その為の武芸大会開催の触文を各所に回した以上、熱心に訴えたのは確かだろう。
(注;これ以降が通常の視聴者視点) そういう訳で、西夏国で婿取り武芸大会が開催されることになった、、、という触文を見た、参加希望者が各地から集まってきた。
古の大国;燕国の末裔である慕容家の公子、武林の名士としても名高い雲南大理国;段家の王子、チベットの統一王朝;吐蕃国の王子などを筆頭に、
(推定)そうそうたる面々の独身男性がエントリーしてきたのだ。…冷やかしもいるようだが。
とはいえ、この大会参加だけでも難易度が高いそうで、一時期は吐蕃国王子配下が、西夏国城外で期間中は「女と子供と老人と死人しか通さん」等と封鎖していたし、それ以前の段階では、西夏国に辿り着く前に砂漠で行き倒れた者も多く、辿り着けたのは出発時点の2割、
8割は砂漠でお亡くなりになったそうである(慕容家の包不同氏の証言による)。
さて、それでは参加者も揃ったことだし、武芸大会で盛り上がるのだろう、、、と視聴者は期待するのだが、なんだか妙な雲行きになる。まずはもてなしのお食事会、、、は、まぁいいとして、公主様収蔵の書画鑑賞会のために場を移動という話になる。
この、書画を収蔵している鑑賞会の会場は、なぜか、城の地下らしい洞窟のような場所を通って移動する。しかも、途中、深い断崖になった幅の広い亀裂を超えないと辿り着けなくなっていた。常日頃、公主様はどうやって鑑賞しているのかと謎だが、それはともかく、その亀裂の上には細い一本のワイヤー
(でいいのか、時代的に?(^^; まぁ、それ様のもの)が渡してあり、それで綱渡りをしないと鑑賞会場に入れないのだ。西夏国に辿り着く前とは違って、ここではなんとか誰も犠牲者は出なかった様子だが、
落っこちる人がいても全然おかしくない状況である。
何故あるのか解らない艱難辛苦を乗り越えて入場した書画鑑賞会場だが、ここにも罠があった(^^;
鑑賞会場の、書画で隠れている壁には特殊な絵が描かれており、これが武功の足りない者が見ると錯乱するというシロモノ(^^;
ご参加の皆様、それぞれに武芸者で肉体が凶器ときた上に、刃渡り何センチだと問い詰めたいような物騒な刀剣を携帯している人達が錯乱しはじめるのだ。をいをい。
ここでも、また、幸運に助けられたとしか思えない経緯で、誰も犠牲者は出なかったが、常識的に判断すれば、これまた
お亡くなりになる方が数人単位で出ていても不思議はない。大理国王子の付き添いで冷やかしの虚竹氏は、ここに招いた魂胆はなんだろうと心の声でいぶかしんでいたが、その感想は視聴者のものでもある。
結果的に犠牲者は出ずにクリアした時点で、案内人は、ここで帰りたい人は好きな書画をおみやげに引き上げて結構、帰り道は案内人が導くと申し出た。
って、安全な通り道があるんじゃないか(^^;
そして紗のカーテンの向こうに公主らしき影があらわれ、事態は次のステージに移る。
次のステージは、公主配下の女性が出す3つの質問に答え、その答が気に入ったら姫と面談できるという課題。
…武芸大会はどこに行ったんだ? その質問とは、
1,生涯でもっとも幸せを感じた場所は?
2,最愛の人の名は?
3,その人の顔立ちは?
参加者がそれぞれに答え、武林では
(一応)英雄と言うことになっている慕容家の公子が答えた時点で、質問者は「北の喬峯、南の慕容」と並び称されるもう一人の英雄、喬峯氏は参加していないのかと呼びかける。
…って、お食事会時点で、出席者を把握していなかったのか? 誰でも入り放題か?(^^;
喬峯氏が不参加であることを、その義弟である大理国王子の付き添いで冷やかしの虚竹氏が進み出て答えたのだが、質問者はせっかくだからと、虚竹氏にも質問に答えるように促す。
虚竹氏の答え;
1,暗い氷室の中。
…なぜか(笑)、公主が動揺して手に持っていた杯を落とす。
2,名前は知らない。
…他の参加者が嗤うが、質問者は妙に庇う(笑)
3,どんな顔だったのかはっきり解らない
…この時点で、公主が虚竹氏に向かって「夢郎、あなたなの」と呼びかけ、「あなたに会いたい一心で父上に触れ文を出してもらったの。昼も夜もこの日を待ちわびたわ」と続ける。
そして、虚竹氏は、公主に招かれカーテンの向こうへ、この時点で会(
結局なんの会だっけ?)はお開き。参加者大騒ぎするも、追い出される。
つまり、公主が夢に見た
(?)相手を忘れかねて、探すために父王が婿捜し大会開催の触文を各所に回したという話のオチ、、、これが、この時点で初めて視聴者に明かされる。
…そして、話のオチが解ってしまうと、巨大な疑問が発生する。
探したい当の相手は、夢かうつつか解らない状態で同衾した、せいぜい声しか解らない相手だ。どう考えても、公主が把握している情報は、肉付き程度ならともかく、
実際の武功の程や、その他、サバイバル関連のスキルは不明である。
しかるに、「夢郎」捜し大会として、以下の問題点が挙げられる。
A,武芸大会ということで開催 ー> 「夢郎」が武功に自信がなければ応募してくる可能性は低い(実際、虚竹氏自身も、参加者の付き添いにすぎなかった)
B,西夏に辿り着けたのは、参加希望者の2割で、残り8割は砂漠等で行き倒れ(慕容家の包不同氏の証言) ー> 「夢郎」のスキルが不明であるのに、砂漠で行き倒れる可能性は勘案しなかったのか?
C,書画鑑賞会の会場にたどり着くには、落ちたら命が無さそうな綱渡りが必要 ー> 「夢郎」のスキルが不明であるので、綱渡りで落ちない保証はない。
D,書画鑑賞会の壁のトラップで錯乱したり、錯乱した人に斬りつけられたりの危険が(^^; ー> 「夢郎」のスキルが不明であるのに(以下略
E,3つの質問「生涯でもっとも幸せを感じた場所」「最愛の人の名」他 ー> そこに「夢郎」がいたところで、氷室等と答える保証は必ずしも無い。
Eはともかく。
AからDに関しては、娘の願いを入れた父王が、だからといってどこの馬の骨か解らない相手に娘と国を任せるわけにも行かないからハードルを設けたと解釈できるかとも考えたのだが、、、しかし、その場合であったら、「夢郎」が確定しても武芸大会は開催されたのではないだろうか
(結局開催されなかった)。
つまり、「夢郎」捜し大会に設定された条件は、公主の発案と考えられるだろう。
………生きた「夢郎」を、公主が見つけ出せたのは、
武侠ドラマだからこそだと断言できる。
虚竹氏本人だって、書画鑑賞会の騒ぎの後、ここに招いた魂胆はなんだろうといぶかしんでいた癖に、あなた、その
疑問は三歩歩いて忘れたのですか?
また、公主発案と考えられる「夢郎」捜し大会のハードルを見ていると、公主の機嫌を損ねた場合、目と耳と口を潰して手足を切り落として厠に転がされたり
(漢の呂后のものとして俗に伝えられるエピソード)、四肢切断の上で酒樽に漬けられたり
(唐の則天武后のものとして俗に伝えられるエピソード)しやしないか、といった危惧を、そこはかとなく感じないでもないので(
断腸丹なんて怖いシロモノがある世界だもんね)、いじられキャラで、お人好しの虚竹氏には十分お気を付け頂きたい次第である。