2008/05/31に言及した教育振興基本計画が閣議決定されたそうなので、報道その他、覚え書き。
毎日新聞 2008年7月1日 東京夕刊『
教育振興基本計画:10年で世界最高学力に いじめ、不登校に対応−−閣議決定』から
(以下および以降、強調などは引用者による) 政府は1日、改正教育基本法に基づく教育振興基本計画を閣議決定した。教育に関する初の基本計画で、「教育立国」を宣言し、「公教育の質を高め、信頼を確立する」など今後10年を通じて教育が目指すべき姿を提示。
したんだそうだ。
今後の五年で取り組む77の施策として示されたものの一部は、「世界最高水準の卓越した教育研究拠点の形成」「いじめ、不登校、自殺などへの対応の推進」「子どもの体力を85年ごろの水準に回復することを目指す」「各大学で教育内容・方法の改善を進め、厳格な成績評価システムの導入を目指す」などがあげられている、という。また、
計画は冒頭で「子どもの学ぶ意欲や学力・体力の低下」「少子化の進行」などを課題として明示した。10年間で世界トップの学力水準を目指し、教育内容、教育条件の質の向上を図るとした。
…で?
と思った例の件は
文部科学省は当初、「教育予算をGDP(国内総生産)比5%超にする」「教職員定数を約2万5000人増員する」との数値目標記載を目指したが、財務省などの抵抗で実現しなかった。教育予算は「諸外国における状況を参考の一つとしつつ、確保していくことが必要」、教職員数は「定数の在り方などの条件整備について検討する」との表現に後退した。また、「私学助成を充実する」などの記載も目指したが、「私学助成その他の支援を行う」との記載にとどまった。
………他の報道も当たってみる。
中日新聞7月2日付社説『
基本計画決定 名ばかりの「教育振興」』から
閣議決定された教育振興基本計画は原案にあった財政支出を伴う記述が削られたうえ「国の財政は厳しい」との文言が加わった。十年先を見通すという触れ込みだが、名ばかりの「教育振興」だ。
(略)
決定では、国内総生産(GDP)に占める公的教育投資の比率を現在の3・5%から「経済協力開発機構(OECD)諸国の平均5・0%を上回る水準を目指す」という記述が原案から削られた。
3・5%で約十七兆二千億円だから、5%にするには約七兆四千億円上積みしなければならない。(中略)財務省が猛反対した。
文科省はこの財政支出によって公立の教職員定数を二万五千人程度増やす記述も原案に盛り込んでいた。(中略)これには総務省が反対に回った。
計画をみると、その二カ所が削除されただけでなく、具体的な施策では「拡充」「充実」との字句が「支援」「推進」に直され、新たに「国の財政状況は大変厳しい」という文言が加筆された。
財務、総務両省の主張が通ったかたちだが、今回の各省協議は年度ごとの予算折衝ではなく、これからの教育のあり方を決める話し合いだった。そこでの結論が財政再建優先では、基本計画の上に乗る「教育振興」の名が泣く。
(略)
現場の先生たちの多忙ぶりが問題視されて久しいが、熱意や使命感だけに頼るにはもはや無理がある。教育投資の大半は教職員予算だが、計画で厳しい見通しが示されたのだから、現場の仕事は増えることになりそうだ。
これで公教育の立て直しは図れるのか。十年先、暗たんとした状況に陥っていないか。
…なんだか、乾いた笑いが浮かんでくる。
山陽新聞7月2日付社説『
教育基本計画 本当に投資拡充できるか』から
(略) 国の発展の原動力となる人づくりのため「教育立国」を宣言し、「欧米主要国を上回る教育の実現を図る」との到達目標を掲げたが、具体的な道筋は不透明と言わざるを得ない。
基本計画は、二〇〇六年の改正教育基本法で策定が義務付けられた教育政策の柱となるものだ。しかし、その裏付けとなる教育予算や教員定数に対する数値目標は盛り込まれなかった。計画の実効性が担保されるのか疑問である。
(略)
授業時間数を大幅に増やす改定学習指導要領の導入に伴い、小中学校の教職員定数を約二万五千人増やすとの数値目標も見送られた。「教職員定数の在り方などを検討」といった抽象的な表記に変更された。新指導要領の全面実施は小学校で一一年度、中学校で一二年度に迫っている。予算や教員増の裏付けがなければ、しわ寄せを受けるのは教育現場であることは間違いあるまい。
(略)
結果的に数値目標が盛り込まれなかったことで、文科省は毎年の予算確保に苦心することになろう。緊縮財政の下では、予算獲得は容易ではあるまい。教育現場の実態を踏まえた上で主張の根拠を強め、説得力ある議論を深めることが必要ではないか。「教育立国」宣言をお題目で終わらせてはなるまい。
読売の報道は懸念の表明もなく淡々としたものなのでお持ち帰り略で、リンクのみ『
「教育振興基本計画」を閣議決定、道徳教育推進を明記』。
実に「らしい」報道をしたのがMSN産経2008.7.1 10:54『
教育振興基本計画を閣議決定 数値目標盛り込まれず (魚拓は無し)』から一部のみ
道徳教育推進の教材について国庫補助制度の導入を検討するほか、伝統・文化や武道、宗教教養教育の推進を図ることなどが明記された。
さすが、独創的である。この二社は、道徳教育の路線が盛り込まれたことが最大の注目点らしい。
脱力したので、今回出た他の報道とか、ストックしていた情報とかを、以降で軽くリンク貼りなど;
・信濃毎日新聞7月2日付社説『
教育基本計画 実現の道筋が見えない』
・2008年7月2日(水)「しんぶん赤旗」『
無制限な教育介入に道 石井副委員長 教育基本計画で談話』
・京都新聞(共同通信)2008年6月12日(木)『
支援怠れば「教育亡国」 高等教育投資拡大求め声明』
高等教育への支援を怠れば、日本は「教育亡国」の道を歩むことになる−。慶応大の安西祐一郎塾長ら中教審委員の4人が12日の会合で、教育振興基本計画の策定を進める政府に、大学や大学院など高等教育への財政支出拡大を訴える緊急声明を発表した。(略) 声明は「高等教育のグローバル化で人材の獲得競争が激化している」と指摘。世界最高水準の教育研究環境を整備して優秀な学生を引きつけ、教育の成果や質を向上させるためには、政府による教育投資の数値目標設定や財政支出の強化は重要と主張している。
・
社団法人 国立大学協会2008年6月19日『
教育振興基本計画策定に向けた緊急アピール(リンク先はPDF)』
1、 政府は、教育振興基本計画に明確な資金投入の目標額を盛り込み、速やか
に高等教育への公財政支出をGDP比0.5%からOECD平均の1.0%を上回る規模へ拡充すること。
2、 政府は、公財政支出の拡充に加え、民間・個人から大学への資金調達を促すための抜本的な税制改正を行うこと。
なお、緊急アピールには、こんなグラフが付いていた。

ご本家;
文部科学省・教育振興基本計画(概要や本文へのリンク)
なお、この本文は、例えば教育基本法改定に反対の意思を持った方は、一通り、読んだ方がいいのではないかと、ちょっと思った。どうも、微妙な表現が多々あるようだ。
例えば、本文の26ページ目にこんな一節があった。
(4)教育委員会の機能を強化するとともに,学校の組織運営体制を確立する
改正教育基本法第16条第1項において,教育は,不当な支配に服することなく,この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり,教育行政は,国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下,公正かつ適正に行われなければならないことが明確化された。各地方公共団体における教育行政については,この趣旨にのっとり,合議制の執行機関である教育委員会と,その構成員である教育委員が,自らの責任を十分に果たし,住民の期待に応えつつ,公正かつ適正に行われることが必要である。
このため,地方の自主性や自立性を尊重し,適切な役割分担を踏まえつつ,教育委員会の機能の強化と,学校の組織運営体制の確立に向けた積極的な取組を促す。