(若干加筆修正しました@09/28 1:30)
9/27現在、20日に採択されたオーストラリア上院決議に関する報道が、この問題にかねてよりの深い関心をもっている産経さんだけ、というなかなかすごい状況ではある。
赤旗さん、そちらまで福田内閣関係で手一杯ですか?
でも、まぁ、せっかくの報道を
Stiffmuscleさんから教えていただいたので、うちでもメモ。
Sankei WEB 2007/09/25 19:19付で「
豪州上院、慰安婦謝罪決議を否決」
オーストラリアの上院で、慰安婦問題について日本に公式謝罪を求める決議案が否決される一方、同問題などで日本政府の取り組みを評価する決議案が採択された。7月末に対日非難決議を採択した米国下院とは対照的な結果となった。(中略)
19日分の野党によって提出された謝罪要求度合いの高い動議が与党に否決されたとの言及の後、
20日に賛成多数で採択された、自由党提出の決議案は「“慰安婦”は日本の歴史におけるおぞましい出来事だ」とする一方、慰安婦問題での日本の取り組みを評価。被害者たちとの対話継続を促す内容となっている。(シンガポール 藤本欣也)
この報道を見たときの第一印象;
なんで5日も後なんだ? 何でシンガポールの記者がレポートしているんだ? 産経はオーストラリアに記者がいないのか?
だったのはともかく。
すでにStiffmuscleさんがぎたぎたにつっこみ入れているけど。
非常に良い所どりに走った報道であることに感心したので、改めて採択された動議を再掲。そして
Stiffmuscleさんの訳をもらって来て並べてみる(《》でくくった注釈もStiffmuscleさんによるものです)。
なお、改めて見つけなおした(文章はPDF版と同じ)
The official record of the Senate HTML版のの当該部分へのリンクはこちら。
12 FOREIGN AFFAIRS―JAPAN―COMFORT WOMEN (外交問題−日本−慰安婦)
Senator Payne, pursuant to notice of motion not objected to as a formal motion, moved general business notice of motion no. 920―That the Senate―
(ペイン上院議員は、formal notion《満場一致の動議》として反対のなかった動議の通知に準拠し、以下の動議920号のgeneral business通知を行った。 −オーストラリア上院はー)
(a) notes that:
(本項以下に留意し)
(i) the suffering of the `comfort women' in the 1930s and 1940s was an appalling episode in Japan's history and that of the Asia Pacific region, and that there can be no disputing the facts of what occurred and the pain that it caused to those affected,
(1930年代および1940年代における「慰安婦」の苦難は、日本の歴史およびアジア太平洋地域の歴史における戦慄すべき出来事であり、それが実際に起き、被害者に苦痛を与えたという事実に異議を唱えることはあり得ない。)
(ii) the position of successive Australian governments has been that the 1951 Peace Treaty, which Australia signed, firmly drew a line under the crimes committed by Japan before and during the Second World War, for which many Japanese were rightly tried, convicted and sentenced,
(日本が第二次世界大戦前および同大戦中に日本が犯した犯罪は、多くの日本人が正当に裁かれ、有罪判決を受け、また量刑が課されており、オーストラリアが署名した1951年の平和条約《サンフランシスコ平和条約》によって確固として解決されたとするのが、歴代のオーストラリア政府の見解である。)
(iii) Japan has made great progress since 1945 in recognising and atoning for its past actions, and for many decades has been a major contributor to international peace, security and development, including through the United Nations,
(日本は、1945年以来、その過去の行いを認識し、償うという点において、大きな進展をみせている。また、数十年にわたり、国連を通じたものを含め、国際平和、国際安全保障、および国際的な開発に対する主要な貢献国の一つであり続けている。)
(iv) the 1993 statement by then Chief Cabinet Secretary Yohei Kono on the comfort women issue (the `Kono statement') fully and officially acknowledged the complicity of the Japanese Government and military in the 1930s and 1940s in a coercive system of sexual slavery in occupied territories, and
(当時の河野洋平官房長官による慰安婦問題についての1993年の談話(『河野談話』)は、1930年代および1940年代の占領地域における強制的な性奴隷制システムについて日本政府と日本軍の共謀を完全にまた公式に認めている。)
(v) the Kono statement has been reaffirmed by subsequent Japanese governments and prime ministers, including by Prime Minister Abe;
(河野談話は、安倍総理大臣によるものも含め、歴代の日本政府および内閣総理大臣によって再確認されてきた。)
(b) commends the Japanese people and Government for the steps they have taken so far to acknowledge and atone for Japan's actions in the 1930s and 1940s; and
(1930年代および1940年代に日本が行った複数の行為を認識し、償うために日本国民および日本政府が現在までに行ってきた複数の方策を賞讃する。)
(c) encourages the Japanese people and Government to take further steps to recognise the full history of their nation, to foster awareness in Japan of its actions in the 1930s and 1940s, including in relation to comfort women, and to continue dialogue with those affected by Japan's past actions in a spirit of reconciliation.
(日本の全歴史を事実として受け入れ、慰安婦問題も含めた1930年代および1940年代における日本の行いにたいする日本国内の認識を育成し、和解の精神を持って日本の過去の複数の行いによる被害者と対話を続けるためのさらなる方策を日本国民および日本政府が講ずるよう促す。)
…まず第一に、この決議は冒頭 (a) (i) で「慰安婦」の被害をはっきり認めており、そこここでよく見かける「慰安婦問題なんて無かった」という主張とは相容れない記述が最初にきっちりある。
(ii) で、日本と同様、オーストラリアも戦後の判決を受け入れていることが述べられている。ので、東京裁判やら、その他の戦犯裁判で確定した判決に異議は言い出しちゃ駄目ってことになるだろう。スマラン事件の有罪もマゲラン事件の有罪も。。。
(iii) は、それが共通見解だろうし、アメリカ決議で公式謝罪要求決議の後に別でやった戦争協力ありがとう決議に類似した記述を、オーストラリアは同じ決議に盛り込んだ訳だ。
それらを前置きに(iv) (v)で釘を刺されている。河野談話の維持と継承を念押しされているのだ。さらにその上、この文章では
「強制的な」「性奴隷制度」「日本政府と日本軍の共謀」の単語がきっちり書かれているのも注目すべきだろう。
その次の(b) 、私はここを読み返してあれ?とおもったのだが、アメリカでさえその名を出して評価した「アジア女性基金」が、明示的に言及されていないのだ。賞賛対照はthe stepsとはっきり複数形だし。。。日本国民が被害者を支援するためにやった行動も、アジア女性基金と同列に評価するって事かな…。裁判支援や、もしかして女性国際戦犯法廷も含めて同列…?
最後の(c)で、歴史を事実として受け入れ(すなわち、前述されたオーストラリア上院が認識している
「日本政府と日本軍の共謀」による「強制的な性奴隷制」という事実を受け入れろと)、婉曲ながら歴史教育の必要性を説かれ、受け入れた歴史をふまえた被害者との和解を促されている。
そして、この
(c)の項目が存在すること自体も注目すべきだろう。前述された項目で「複数の方策を賞讃する」等と記述しながら、その方策が十分ではなかったという評価をオーストラリア上院は伝えてきている訳だ。なぜなら、それまでの「賞賛された」償うための取り組みが十分なものであると認めているのならこの項目は存在するはずはないのだから。…しかも、その取り組みとして名を挙げて言及しているのが「河野談話」だけという文脈なのである。
そういうわけで、この決議は「従軍慰安婦なんていない」「性奴隷いうな」「河野談話は事実に基づいていないから撤回」という、よく目にする意見とは相容れないものであるのは明らかだろう。
…なのに、そういった意見を述べていた人の一人が「朗報」と評していると伝え聞いて、、、非常に驚いていたりする。
いや、「無かった派」のいつもの主張から判断すると、朗報って喜ぶほど持ち上げてくれてないから。