もとより、私は愛国心なんて言い出されたらゾッとするクチだ。
放し飼いだと面倒な事でもせっせとやってる癖に、強制されると簡単な事でも嫌がりはじめるような元々の性分に加え、親から戦争で酷い目にあった話も聞いている。愛国心・愛国心といっていた大人達が、敗戦で手の平を返した話を、憤慨を込めて聞かされて育った。
…美味しいお刺身やお茶漬けを食べて「あー日本人に生まれて良かった」と思うから、きっとこの国が好きなんだろうと思うが、愛国心なんてお題目でくくって欲しくない。ましてや、愛国心があったら、現政権のやりように対し批判をしないなんて勘違いはとんでもない。愛国心は愛政府心ではないし、愛自民党心でも愛天皇心でもない。
話がそれてるが、そういう訳で「愛国心なんて言い出す奴はでぇっ嫌えだ」の基本思考故に、東京都教育研修センターの報告書を偏った見方をできるだけ排除しつつ読むのは多少苦労した。成功したかどうかは保証の限りではない。
まず、報告書には
「1 基礎研究、(1)「国を愛する心」について、「国を愛する心」とは、自国をつくっている人々、自然、文化、伝統、歴史等の理解を深め、尊重し、継承・発展させ、自己や社会の理想を求めて主体的に生きようとする思いととらえた 。」
とある。
国というくくりで、いきなり、沖縄とか北海道とかでどういうとこから話をはじめるつもりか興味が生じてしまうが(報告者は東京だから、そのあたりは気にしなくていいのかな)、そこをおいておいても、自然にしても、文化にしても、伝統にしても、歴史にしても、立派なお題目であるが、そんなに確固たる概念なのだろうか?
自然…「都会の中の小さな自然」とか称して、ちゃんちゃらおかしいモノが奉られていたりするよなぁ
また、ある人が文化だと思っているモノが他の人にとっては文化と認められないモノであるなんてよくある事だろう。たとえば、今現在はアニメは文化として認められているだろうが、ほんの2-30年ほど前はどうだろう。単なる低俗な娯楽扱いだったはずだが。歌舞伎なんてのも、興った当時はエロい大道芸扱いだったときくし。
伝統だって、近頃のエライ人たちの頭の中の伝統は、明治以来のみと認識している様子だし。歴史…「新しい歴史教科書」なんてのもあったな。
「理解を深め」る対象を選ぶ事で、いくらでも恣意的にできる授業にみえるが、表現としては無難だしこういうお題ではこうとしかしようが無いかも、と、無理矢理先に進んで読むが、何とも気持ちが悪い。
この違和感はなんだろうと不思議に思っているウチにどうやらこれかと思う箇所に行き着いた。
表1 「国を愛する心」に関連する内容項目(高学年)
家族や家庭を愛する 父母、祖父母を敬愛し、家族の幸せを求めて、進んで役に立つ事をする。
学校を愛する 先生や学校の人々への敬愛を深め、みんなで協力しあいよりよい校風を作る。
郷土を愛する、国を愛する 郷土や我が国の文化と伝統を大切にし、先人の努力を知り、郷土や国に愛する心を持つ。
人類を愛する 外国の人々や文化を大切にする心をもち、日本人としての自覚をもって世界の人々と親善に努める。
自然を愛する 自然の偉大さをしり、自然環境を大切にする。
…敬愛する対象が上位者のみですね。それと、伝えられたものをありがたがるのみでしょうか。自ら新たな伝統を作るという気概は不要なのでしょうか。
「外国の人々や文化を大切にする心をもち」「世界の人々と親善に努める。」これは、ト知事がまず実践してくれないと、説得力ありませんが。
「自然の偉大さをしり、自然環境を大切にする。」題目倒れ…。大人が自然を舐めて、シーズンには熟年登山者がぞろぞろ遭難してるんではこっちも説得力無いなぁ。
なんとも、トホホ感が炸裂する愛国心教育ではなかろうか。
しかし、これが東京都教育研修センターのサイト、どうどうとアップされている報告書な訳だ。
お偉いさん達が肯定的にとらえている事が推測される。
このネタを拾った「今日行く審議会@はてな」さんでも
________________________引用開始________________________
最近よくこういう授業に出会う。そして、良い評価を受けていることがある。だが、こういう授業では、教師の想定した授業の流れに子どもたちはただ合わせていくだけで、子どもたちが何かを考え、自分の中に取り込み再構成し、それを表現することはない。教師は、想定されたストーリーから外れないように「発問」を駆使して「テンポ良く」授業を進めていく。教師や外側から見ればこういった授業は、テンポ良く進むので良い授業に見えてしまう。しかし、子どもの視点から見るとその評価は違ってくる。また、こういう授業では子どもが価値判断をするということもなく、教師の示す価値観を追認するだけになってしまう。
________________________引用終了________________________
と、別の視点から批判されている。
教育基本法を妙なモノに変えて、愛国心教育を推進し、上位者を敬愛するのみで、自ら創造する気概のない若年層をさらに量産する気か(すでに現時点でその手のでこりごりしているのだけど)。
技術立国とかいう話が聞こえてくるが、本気で考えているならそれじゃまずいんだけど。
追記;
その後、行きつけを巡回していると
gegengaさんちでも取り上げられていて、
debyu-boさんのところでも取り上げられていた。
お二方とも、重点を置いていたのが「教育相談の心理ハンドブック」とやらに基づく、合いの手を入れて児童の発言を誘導する部分。私はついつい「教職課程ではこういう事を習うのかな」とスルーしてしまったが、気持ち悪いなぁと感じたのは確か。
で、気持ち悪く感じる感性がこの辺(?)では少数派でない事に、何となく安心したのでした(笑