ネットでニュースをチェックしていると、妙な報道が目についた。産経が、おかしな報道を出していたのだ。
…それはいつものことではないのか?等のツッコミは、ひとまずご遠慮願いたい。
2010.7.25 09:47『
国際組織「日本は自国解釈のみ反映」 歴史教科書“一方的”勧告 - MSN産経ニュース』
…国際組織? なんかイルミナティか何かかと勘違いしそうな呼ばれようである。
国際組織「児童の権利委員会」が、日本の歴史教科書について「日本の解釈のみを反映している」などと批判し、日本側に是正を勧告していたことが24日、分かった。
児童の権利委員会って…。そりゃ、国際組織であることは間違ってないが、なんか言葉の選択がおかしくないか?
同委員会は、18歳未満の権利についての国際条約「児童の権利条約」が、締約国で履行されているか審査する組織。
説明を追加すれば良いという問題だろうか?とも思うが、なんだかなぁ。
『
外務省: 児童の権利条約(児童の権利に関する条約)』にはこうある。
児童の権利条約は、18歳未満を「児童」と定義し、国際人権規約において定められている権利を児童について敷衍し、児童の人権の尊重及び確保の観点から必要となる詳細かつ具体的な事項を規定したものです。1989年の第44回国連総会において採択され、1990年に発効しました。日本は1994年に批准しました。
つまりは、産経新聞が「国際組織」という微妙な表現で呼ぶ児童の権利委員会は、国連の人権機関の一つ。当ブログでも
6月1日にエントリにしたが
(で、その後、審査結果が予想通り過ぎたので、つい放置してしまったたのだが(^^;)、児童の権利条約に関する対日審査が、2010年5月27日と28日に国連本部で行われていたのだ。
この児童の権利委員会の勧告が出たのは、6月15日のこと。
「パワー・トゥ・ザ・ピープル!!」さんは6月20日の記事で
日本のマスコミでは全く報道されなかった「国連子どもの権利委員会最終見解」発表。韓国のニュースから引用する。
と前置きしながら16日配信の聯合ニュースを紹介しておられたが、
15日に公開された委員会の報告書によると、先月25日から今月11日までの第54会期で、日本の「子どもの権利条約」履行状況を審議。その結果、日本の歴史教科書はアジア太平洋地域の他国の学生との相互理解を強化できないだけでなく、歴史的事件を日本の観点でだけ記述していることが懸念されると指摘した。そのうえで、「アジア太平洋地域の歴史的事件に対しバランスの取れた視角を示せるよう、教科書を公式に再検討することを政府に勧告する」と述べている。
少し遅れて、18日には朝鮮日報だって報じていた。
同委員会は、16日に公開した報告書で、第54会期(5月24 日-6月11日)中に実施した日本の「児童の権利に関する条約」履行状況の審議の結果、日本の歴史教科書は、アジア・太平洋地域の他国の生徒たちとの相互理解を強化し得ないだけでなく、歴史的事件を日本の観点からだけ記述していることを懸念する、と指摘した。
また、「アジア・太平洋地域の歴史的事件に関してバランスある視点が見られるよう、教科書を公式に再検討することを政府に勧告する」と記した。
これらの記事では、大漁ではなかったが
聯合ニュースでも、
朝鮮日報でも、はてウの皆さんが釣られている。はてウの皆さんより情報の遅い全国紙って何事?
その答は、ちょっと検索したらわかった。答を密かに示していたのが産経記事の末尾部分。
教科書問題に取り組む「新しい歴史教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)は「教科書をどのように書くかは、その国の教育の根幹にかかわる。不当な内政干渉で、断固拒否すべきだ」とする要請書を外務省に提出した。
実は、平成22年 7月23日(金)付けの「つくる会ニュース」第276号『
国連児童の権利委員会の勧告問題で外務省に要請 わが国の教科書に対する内政干渉を排除せよ!』にて、こーんなのがでていたのだ。
平成22年7月22日
外務大臣 岡田克也 殿
新しい歴史教科書をつくる会
会長 藤岡 信勝
国連の児童の権利委員会を利用した我が国の教科書に対する内政干渉の排除を求める要請
(1)国連の児童の権利委員会は、5月25日から6月11日まで、「児童の権利に関する条約」の日本における履行状況について審議を行い、6月15日に最終勧告が公表された。その中に、当会の事業に関わりの深い教科書問題について言及された箇所があることがわかった。(略)そこで、この勧告についての私たちの見解を述べ、外務大臣におかれては我が国の国家主権を守るために適切な対応を取られるよう強く要請する。
(略)
(2)この勧告は、原理的にも、内容的にも、手続き的にも、不当極まりないものである。
第一に、原理的な問題として、そもそも教科書をどのように書くかは、その国の教育の根本にかかわる事項であり、国家主権の中核をなす、他に譲り渡すことのできないものである。従って、いかなる組織といえども、我が国の教科書に対して行われる介入は国家主権を侵害する不当な内政干渉であり、断固として拒否すべきものである。
第二に、その勧告の内容を一瞥しても、それが全くの的外れであることは明白である。例えば、「日本の歴史教科書が、歴史的事件に関して日本の解釈のみを反映しているため、地域の他国の児童との相互理解を強化していない」と述べているが、日本の歴史教科書の問題点は、むしろ反対に、歴史的事件に関して、諸外国に配慮するあまり、「日本の解釈」を明確に書かないできたことにあると言うべきだ。さらに、一般的に言って、歴史教科書に歴史に関する自国の解釈を書くのは当然のことであり、どの主権国家もそのようにしているのである。
第三に、委員会が「懸念」するという、その「情報」が、どのようにしてもたらされたかということも問題である。委員会が、日本の歴史教科書について何らかの判断を下す裏付けとして、日本の歴史教科書の大量な翻訳資料を用意し、熟読したとは思えない。だから、勧告文は単に「情報」と言って根拠をあいまいにしているのである。児童の権利委員会が勧告内容を決定するに先だって、日本政府の正式な代表ではないNGOメンバーとのレセプションが行われているが、このレセプションが委員会に不公正な情報を提供する場になっている可能性がある。かつて、国連の人権委員会が、日本の活動家による「従軍慰安婦問題」の宣伝の舞台として利用され、「セックス・スレイブ」という、事実を完全に歪めた用語が国際的に流通する重大な事態をもたらしたことが想起される。このように、今回の勧告は、手続き的にも不公正で不明朗なものである。(略)(以上)
22日付の、通常運転(笑)な、つくる会の申し入れである。この人達が、歴史教科書を『諸外国に配慮するあまり、「日本の解釈」を明確に書かないできた』と言い出していたりって、あなたたちの「解釈」を「日本の解釈」と僭称しないでいただきたいものだ。
こうして、韓国メディアが一ヶ月以上前の6月16-18日にはとっくに報道していた話題を、
(産経的にはようやく24日に解ったということで)「24日、分かった」として25日に報じる産経はこんな記事に仕上げる。
歴史教科書は中学だけで9種類(平成22年度用)あるが、教科書名は特定せず、具体的にどういう情報を基に何を問題視しているかも明示していない。
逐次数え上げるのもキリがないほどという解釈もあり得るが。だいたい、例えば、「慰安婦」問題が教科書の記述にないことは、国連の人権関係の委員会全てで勧告を喰らっていたのではなかったか、という話である。
韓国と歴史認識が異なることを理由に日本の教科書是正を勧告しているとすれば、重大な問題だ。
「とすれば、重大な問題」w
例えば、
女性差別撤廃委員会第44回会期の日本審査での総括所見には、こんな一節があった。
37. The Committee notes that some steps were taken by the State party to address the situation of "comfort women" but regrets the State party's failure to find a lasting solution for the situation of "comfort women" victimized during the Second World War and expresses concern at the deletion of references to this issue in school textbooks.
本委員会は、「慰安婦」たちが置かれてきた状況の解決に向けて当加盟国が取ったいくつかの措置については注目するが、第二次世界大戦中に犠牲となった「慰安婦」たちが置かれてきた状況を永久に解決する方策を当加盟国が見出せていないことを遺憾とし、この問題に関する教科書の記述が削除されたことを懸念を表明する。
という訳で、「韓国と歴史認識が異なることを理由に日本の教科書是正を勧告」しているとは考えがたい。「とすれば」ではあまりなさそうなので、「重大な問題」ではないようだw
そして、例によっての、お得意の「逃げ」が
勧告には法的拘束力はないが、外務省の担当者は「適切に対処する、としかいえない」と困惑している。
あるいは、厚顔な言い様が。
外務省によると、同委員会委員は条約締約国の選挙で選ばれ、学識経験者や「人権の専門家」ら18人で構成されている。政府関係者によると、非政府組織(NGO)や日弁連などの見解の影響を受けることはしばしばあるという。
「しばしばある」ね。無いと困るのだ。無いと困る理由は、政府の方が作っているのではないか。
自由権規約委員会(規約人権委員会)は自由権規約の締約国に選出された18名の専門家によって構成されており、(略)
今回の日本政府の報告書審査は93年に続く第4回目。審査にあたっては数多くのNGOが、政府報告書の誤りや、政府が規約違反と思われる問題を隠していたり、国内で述べていることとの食い違いを報告していることを指摘すべく、独自の報告書を提出したり、オブザーバーとして委員会の委員に対するロビー活動を行なう。
また、今回の審査において、ある委員より、「これだけ多くのNGOが審査現地に来るということは、日本国内において、政府とNGOの間に十分な協議の機会が確保されていないことを示していると思われる。」という言及があったことに注目したい。この点は、「最終所見」にも明確に反映されている。
どうやら、
自民党広報誌「下野なう」産経新聞は、つくる会の下請け広報機関でもあったようだ。
…そうして、嫌韓系のねらーやブロガーやブクマカーが盛り上がっている模様。
国連児童の権利に関する委員会(委員長:李亮喜〈イ・ヤンヒ〉成均館大法学部教授)は、日本の歴史教科書について、アジア・太平洋地域の過去の歴史に関する、バランスある視点が見られないとして、日本政府に対し是正を勧告した。
(略)さらに報告書は、華僑の学校や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の学校などに対する支援が十分でなく、これらの学校を卒業しても、大学入学に必要な資格要件が認められないことにも注目し、日本政府が日系以外の学校に対する支援を増やし、大学入学などの面での差別を撤廃することを勧告した。
さらに、開発途上国の児童の人権を優先的に考慮する政府開発援助(ODA)を拡大し、アイヌや韓国人など少数民族出身の子どもたちに対する差別をなくすことも勧告した。
同委員会の李亮喜(イ・ヤンヒ)委員長は、2004年の日本に対する総括所見で首席審議官として活動している。今回も歴史教科書と朝鮮学校差別問題を積極的に提起した。先ごろの聯合ニュース特派員の取材では、「これら問題は、人権条約履行状況を検討する際、継続して提起していく必要がある」との考えを示している。今回の報告書は、今後行われる日本に対する国連人権理事会の普遍的審査(UPR)でも活用されるだろうと述べた。
(仮私訳部分に修正有り@3/7)
国連の人種差別撤廃条約の実施状況審査が、人種差別撤廃委員会(CERD)によって、2010年2月24日ー25日、ジュネーブで行われており、
朝鮮学校を高校授業料無償化法案の対象外にする動きに複数の委員から疑念を表明されていたりする訳だが。
その審査概略が、The United Nations Office at Genevaにて公表されていると知った。
「
COMMITTEE ON ELIMINATION OF RACIAL DISCRIMINATION CONSIDERS REPORT OF JAPAN」25 February 2010
知ったのは、反差別国際運動(IMADR)日本さんのコンテンツで。こちらには、冒頭の仮訳も掲載してくださっていたので、ざっと読んで気になった部分に、今回は重点を置いてみることにする。
人種差別撤廃委員会は日本の第3回から第6回の合同報告書を基に同国内で条約がどのように実施されているのかを審査した。(略)
暫定的な総括所見を述べる中で、日本報告の特別報告者であるパトリック・ソーンベリー氏は、人道的見地からの人種差別撤廃の重要性とそれを保障するための教育の重要性など、一部分においては日本政府と委員会の間に幅広い合意があると留意した。また、アイヌ民族の地位と国内人権機関創設に関する動きの方向性に関しても合意があったとした。しかし、部落民の問題と日本政府の“世系”の解釈など、委員会の懸念する分野が残されたままとなっている。委員会は人種差別に関する法律、憎悪発言の規制、人権侵害救済の必要性、人権教育および人種差別と不寛容に対処するための一般市民の啓発、日本人以外の人びとと接触する職務につく公務員および公務員全般への教育の必要性を主張した。
日本代表との2日間にわたる審議の中で委員からいくつもの質問と問題点が挙げられた。それらには、外国籍者として日本に残り国籍を得ることができなかった在日コリアンの状況、教育政策が外国人の子どもたちに及ぼす影響に関するさらなる情報、インターネット上を含む外国人嫌悪や人種主義の動きをモニターするメカニズムの存在の有無などがあった。(後略)
…「外国人嫌悪や人種主義の動きをモニターするメカニズムの存在の有無」ということは、あることを問題視されるはずはないだろう。すなわち(以下略。
委員会による審査概略の原文からも、ヘイトスピーチ規制路線に関連しそうな部分を確認しておこう。
Mr. Thornberry was further concerned that there was a fairly tolerant approach to hate speech, in particular with regard to class derogation or in reference to a group of individuals as a whole, which might not be caught as easily as incidents of individual defamation, and thus not remedied or corrected. There were dangers to society in what could be called a "coarsening" of public debate, and there had been reports of incidents of rather gross statements made in public in Japan.
ソーンベリー報告官は、更にとりわけ、蔑視される階層や個人からなる団体全体に特に向けられるヘイトスピーチに対し、かなり寛容な対応しかされていないことに、懸念していた。それらは個々の名誉毀損事件ほどそれと見破ることが容易ではないようで、それ故、救済も是正もなされないようだ。
それは、公領域議論の粗野化とでも呼ぶべき社会にとっての危険であり、また、日本で、公衆の面前でなされた酷い街宣事件の報告があった。
仮訳は付けているけど、あまり正確なものでないであろう事はご了承いただきたい
(*)。この段落の後半部分、おこじょさんがご紹介の「
国連デビューしちゃったやばい人々」のことだろう。
そして、最終段落で、
The Committee would argue for laws on racial discrimination; controls on hate speech; the need for remedies; the need for human rights education and education of the general population on matters to do with racial discrimination and tolerance; and the need for education of officials, including those in most regular contact with non-Japanese, Mr. Thornberry concluded.
委員会は、ソーンベリー報告官が結論した、人種差別に関する法律;ヘイトスピーチの規制;人権侵害救済の必要;人権教育及び人種差別と(人種間の)寛容に関する事柄についての市民啓発の必要;非日本人ともっとも定期的に接触する人を含む公務員への教育の必要、を主張する。
ヘイトスピーチ規制は、3月12日には発表される予定という国連・人種差別撤廃委員会からの日本政府への勧告を含む総括的な所見でも主張されるものと思われる。
なお、今回も
(も?)日本政府からの報告は酷いものであったらしく、こちらで紹介されていた。
「
人種差別撤廃委員会で行われた日本の人権状況を審査する会合について - dj19の日記」
やっしゃんはエントリを先住民族関連の記述でまとめてくださっているが、ご紹介の前田朗氏のブログエントリも必読だろう
(最初の一つにはブクマを付けて読んでいたのだが)、特に審査後の記者会見のエントリが。
3月1日付で、「
前田朗Blog: グランサコネ通信2010-06」、「
前田朗Blog: グランサコネ通信2010-07」、「
前田朗Blog: グランサコネ通信2010-08」。
一番後のエントリより一部ご紹介。
25日のCERD審査終了時、人種差別撤廃NGOネットワークは在ジュネーヴ記者に記者会見を行いました。朝日、毎日、共同、時事など。(略)
一つひとつ批判しているときりがないのですが、まずアイヌについては、先住民族と認めたことばかり強調しているが、その後の進展は見られない、作業部会などといっても記念公園と、生活実態調査だけに絞られていて、他のことは議題にもならない。UN権利宣言とは、まったくかけ離れている。非常に不満である。
朝鮮学校の件は、日本政府は事実を知ろうともしない、問合せも調査もせずに、勝手に決め付けて差別している。嫌がらせについても、人権擁護局が調査などというが、実際は20年間まともな調査をしたことがない。
部落については、上田大使の発言はとんでもない、1965年に逆戻りだ。志野課長がフォローしていたが、あの程度の認識だ。
沖縄については、まったく許せない。学問的にはわからないと言いながら、結論だけは勝手に決め付けている。沖縄語は日本語の変形だなどとなぜいえるのか。ずっと沖縄の声に耳を傾けようとしないではないか。委員が協議しろと何度も言ったのに、それには答えなかった。
移住者については、石原都知事のような差別発言問題に十分な配慮がない、など。(後略)
以下、「
ふと後ろを振り返ると、そこには夕焼けが - nagonaguの日記」より、孫引き
沖縄県民が他府県と同じように、経済政策の主体となりえず、四〇年にわたって政府の直轄領のように補助金事業に依存する財政経済システムをとってきたのは、まさに沖縄差別である。
「沖縄差別」を肯定して、沖縄の主体性をとなえるのは、「自虐の論理」ではないか。
あっちにもこっちにも、荒涼たる風景が目に入り、ため息ばかりが出るような気がする。
*、英語圏で言語学修士を取得した方とnative English speakerの方、他合計4人の方からご指摘等を頂き、訳部分を改訂しました@3/7
見て回ったところ4社分の報道しか見当たらなくて、比較的注目度が低そうである。まさか、「日本は単一民族国家だから人種差別なんてほとんど無い」なんて意見が多数派だったりしないだろうなという危惧が頭の隅をかすめるのが、気のせいじゃなければいいが。
対日審査は9年ぶりという。
欧米や発展途上国出身者を含む18人の差別問題専門家らが、アイヌ民族や在日外国人、被差別部落などをめぐる差別の現状や改善に向けた取り組みをただし、日本政府の代表団が回答。(略)
冒頭、日本政府代表は、鳩山由紀夫政権がアイヌ民族支援などを含む人権擁護への取り組みを強化していると強調。(略)
2008年6月にようやく
「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」採択され、それなりに取り組みはすすんでいるとはいえ、日本の人種差別撤廃の取り組みがそう目覚ましいはずもない。
(略)
各国の専門家が2日間の日程で、アイヌ民族・在日外国人・被差別部落・琉球諸島など、日本における差別問題の実態や改善状況について、日本政府代表団に質疑を行い、3月12日に委員会としての見解を示す。(略)
各国委員からは、日本が人種差別禁止法を制定しようとしないと指摘する意見が出た。
この人種差別撤廃条約には個人通報制度を含めた選択議定書はないようだが、
自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会などの人権諸条約の実施機関から各人権諸条約の選択議定書を批准等を、繰り返し勧告されてる日本の取り組みでは、どれだけ取りこぼしがぞろぞろあるやらという方面の話であるが、折しも、注目を浴びる馬鹿発言が出たところである。
24日、ジュネーブの国連施設で9年ぶりに開かれた人種差別撤廃委員会の対日審査会合で、朝鮮学校を高校授業料無償化法案の対象外にする動きに複数の委員が疑念を表明、日本政府に説明を求めた。
アフトノモフ委員(ロシア)は同法案について「(教育担当とは)別の大臣が、北朝鮮との外交関係を理由に朝鮮学校を除外すべきだと主張しているようだが、そのような差別的な措置が法律に盛り込まれるのか」とただした。
またカリツァイ委員(グアテマラ)も同法案を歓迎した上で、朝鮮学校の除外に「懸念」を表明。(後略)
→参考;
中井国家公安委員長は日本人拉致事件を受けた北朝鮮への制裁と関連して、4月から実施予定の高校授業料の実質無償化の対象から在日朝鮮人の通う朝鮮学校を外すよう川端文部科学相に要請した。(略)
中井委員長は記者会見で、文科相に対し、「(北朝鮮に)制裁をかけていることを十分考慮してほしい」と昨年末に伝えたことを明らかにした。(後略)
鳩山由紀夫首相は25日夕、中井洽拉致問題担当相が朝鮮学校を高校の実質無償化の対象外とするよう求めていることに関し、「指導内容というか、どういうことを教えているのかということが、必ずしも見えない中で、中井大臣の考え方は一つあると考えている」と述べ、理解を示した。(後略)
…首相まで、理解を示したそうである(呆)。
…‥‥‥2001年3月の、人種差別撤廃委員会 第58会期における最終所見の「懸念事項および勧告」は、以前にもブログにお持ち帰りしているが再度一部引用しておこう。
7. 人口の民族的構成の確定に際して生ずる諸問題についての締約国の見解に留意する一方で、委員会は、締約国の報告書にはこの点に関する情報が欠如していると認定する。
締約国が次回の報告書において、委員会の報告書作成ガイドラインが求めるところに従い、人口構成の十分に詳細な情報、とくに、韓国・朝鮮人マイノリティ、部落民および沖縄人集団を含む、条約の適用対象となるすべてのマイノリティの状況を反映した経済的および社会的指標に関する情報を提供するよう勧告する。
沖縄の住民は、独自の民族集団であることを認められるよう求め、この島が置かれている現状が沖縄住民に対する差別行為をもたらしていると主張している。
13.委員会は、高い地位にある公務員による差別的な性格を有する発言、ならびに、とくに、条約第4条(c)の違反の結果として当局がとるべき行政上または法律上の措置がとられていないこと、および当該行為が人種差別を扇動し助長する意図がある場合にのみ処罰されうるという解釈に懸念をもって留意する。
締約国に対し、かかる事件の再発を防止するための適切な措置をとること、とくに公務員、法執行官および行政官に対し、条約第7条に従い人種差別につながる偏見と闘う目的で適切な訓練を行うよう求める。
→参考;
「山手線に中国人だけの町ができた。ほとんどが不法入国。この町では泥棒の5点セットを売っている……」などと特定の国名を挙げて批判した。
他にも、東京都知事という「高い地位にある公務員」氏が大量生産する差別発言は枚挙にいとまがあるまい。ってか、東京都知事だけの話でもなかったりする訳ではある。
14.委員会は、韓国・朝鮮人(主に子どもや児童・生徒)に対する暴力行為の報告、およびこの点における当局の不十分な対応を懸念し、政府が同様の行為を防止し、それに対抗するためのより断固とした措置をとるよう勧告する。
「対抗するためのより断固とした措置」をとったのだっけ? 野放しにしか見えないのだが。
16.委員会は、韓国・朝鮮人マイノリティに影響を及ぼす差別を懸念する。朝鮮学校を含むインターナショナルスクールを卒業したマイノリティに属する生徒が日本の大学に入学することへの制度的な障害のいくつかのものを取り除く努力が行われているものの、委員会は、とくに、朝鮮語による学習が認められていないこと、および在日韓国・朝鮮人の生徒が上級学校への進学に関して不平等な取扱いを受けていることを懸念する。(後略)
18.日本の国籍を申請する韓国・朝鮮人に対して、自己の名前を日本流の名前に変更することを求める行政上または法律上の義務はもはや存在していないことに留意しつつ、委員会は、当局が申請者に対しかかる変更を求めて続けていると報告されていること、および、コリアンが差別をおそれて、そのような変更を行わざるを得ないと感じていることを懸念する。
委員会は、個人の名前が文化的および民族的アイデンティティの基本的な一側面であることを考慮し、締約国が、かかる慣行を防止するために必要な措置をとるよう勧告する。
こういった勧告を既に9年前に受けているのだ。このところ、更にレイシズム言説が目立つように感じられてならないのだが、9年間、日本政府は何かしてきたのか?
例えば、ドルジにでも意見を訊いてみたいところだ。
日本政府代表の上田秀明・外務省人権人道担当大使は冒頭、人権侵害問題に迅速に対応するため、政府からの独立性を持った「国内人権機構」の創設を検討していると表明した。
…ようやく「検討」らしい。
関連エントリ;
2007/08/21「
どこかで見たような」
2009/04/24『
国連「人種主義に反対する世界会議」が日本にとっては余所事ではなかった事を確認』
女性差別撤廃委員会の総括所見
(最終コメント、最終所見等と訳している場合有り)が出たことを受けた、各報道機関のネット記事が確認できるようになってきた。出た順に並べてみよう。
しんぶん赤旗(2009年8月19日)
短いが、指摘事項全般に言及し、日本政府の取り組みが鈍い点を指摘した記事。ただし、民法や雇用には言及しているが、選択議定書・「慰安婦」・性暴力ゲームへの言及無し。
asahi.com(2009年8月20日9時5分)
これも、指摘事項全般に言及した記事。しかも、民法・雇用・選択議定書・「慰安婦」・性暴力ゲームを網羅して言及。
時事ドットコム(2009/08/20-16:51)
取り組みが遅いことと、民法・選択議定書のみ言及。
共同通信(配信先は47ニュース・産経他、2009/08/20 22:42)
民法と雇用しか言及してない。「厳しい内容で、政府は迅速な対応を迫られそうだ」って、他人事っぽい表現に見えるような?
毎日新聞(2009年8月21日 12時51分 更新:8月21日 14時5分)
なぜか、「20日、
(略)最終見解を出した」 ことになっている
(この箇所、見落としていてコメント欄のご指摘により追加、ありがとうございます)。雇用に関する言及がほとんど無いような? 一応、民法・性暴力ゲーム・「慰安婦』問題への言及はあるが、選択議定書は無し。そして、どうしたことか、「女性が離婚後、6カ月しないと再婚できない民法733条の規定を撤廃するためただちに行動することなどを勧告」と出だしに書き、インタビューもそれに絞った、民報733条撤廃に極端に焦点を絞っている記事。
・
‥
…
……キョロキョロ。読売さーん?
「大手小町」の中(これ、解りやすい新聞社だとかなりうけてしまった…うけている場合でもないかもしれないけど)の「とれたて!ミックスニュース」のコーナーにて、『
女性参画、日本の遅れ指摘…国連』というタイトルで、『委員からは「日本全体で女性の参画は進んでいないのではないか」などの意見が出された』と簡単にしめている記事が、2009年
7月25日付で、あるだけで
ある。*19:40追記;19時07分付でようやく、「国際」から記事が出ました。
『
婚姻可能齢など差別是正を、国連委が日本に勧告』
国連の女性差別撤廃委員会は20日、日本における女性差別是正に向けた「最終意見」を公表し、女子の婚姻可能年齢を現行の16歳から男子と同じ18歳とすることや、女性が離婚後6か月経ないと再婚できないと規定した民法733条を改正することを勧告した。(後略)
こちらも21日報道組の毎日新聞と同じく、勧告が「20日」に出たことになっていてびっくり(^^;
わたくし、18日にこの総括所見でエントリ上げてますけど?略した部分には、『日本政府は勧告に沿った対応が必要となる』とあり、性暴力ゲーム・慰安婦に言及。選択議定書と雇用に関しては言及無し。民法の言及はあっても、別姓には言及無しでもある。
ついでに、
朝鮮新報(2009.8.21)
「慰安婦」問題に焦点を絞った記事。ここはまぁ、仕方ない。
以下、『
アジア女性資料センター - CEDAWが日本政府審査の総括所見を公表』2009-08-18付から、主なポイントの要約をお借りする。
●主要な懸念
条約のすべての条項を系統だてて実行するという政府の義務を果たすよう、あらためて求める。
●前回の勧告
2003年の審査で勧告された事項が、十分に取り組まれていないことを遺憾とし、前回の勧告実行を求める。
●差別的法規
男女で異なる最低婚姻年齢、女性のみに課せられる再婚禁止期間、選択的夫婦別姓、民法その他法規における婚外子差別などの差別的規定が、前回勧告を受けたにもかかわらず、いまだに改正されていない。世論を言い訳にせず、条約上の義務に従って即座に行動すべき。
●条約の法制化
女性差別撤廃条約が、法的拘束力をもつ重要な国際人権法であることを、日本政府は認識すべき。条約のすべての条項を国内法制に迅速に取り入れること、法律家や公務員が条約への理解を深め実践するよう啓発を行うことを求める。また選択議定書の批准を検討するよう勧告。
●差別の定義
国内法に女性差別の定義が欠けていることを改めて懸念、条約1条に基づく差別定義を迅速に取り入れるべき。
●人権擁護機関
男女平等も視野に入れた独立人権擁護機関を迅速に設置すべき。
●国内推進機関
ジェンダー平等を推進する男女共同参画局などの機関を機能強化するため、責任と権限の明確化、調整機能の強化を行うべき。第三次男女共同基本計画の法的枠組みとして女性差別撤廃条約を活用し、モニタリングメカニズムを設けること。
●暫定的特別措置
女性の雇用、公的領域への参加、意思決定への参加を促進するため、委員会一般勧告25号に沿って、暫定的的特別措置を設けるよう勧告。
●ステレオタイプ
女性の人権に対する政府内の「バックラッシュ」に懸念を表明。メディアや教育における男女の役割に対するステレオタイプを取り除くため、教科書の見直し等の取り組みを行うこと、また、公人による女性差別発言の頻発や、女性を性的対象とするポルノグラフィー、メディアにおける女性差別表現に対する政府の取り組みを求める。
●女性に対する暴力
女性に対する暴力に関する意識啓発、データの収集と調査にもとづく介入を行うよう勧告、法執行官や医療関係者等が十分な知識にもとづく支援を行うよう求める。DV法があらゆる形態の親密な関係の暴力を対象としていないことを指摘、保護命令の発行を急ぐこと、暴力被害者のための24時間ホットラインや質の高い支援を提供するよう勧告した。特に、移住女性やマイノリティ女性、弱い立場にある女性の状況に懸念を表明し、弱い立場の女性たちに対し、被害の届け出等について支援を行うほか、暴力防止の意識啓発を行うよう求める。性暴力の親告罪規定の撤廃、強姦罪の法定刑引き上げ、近親かんを性暴力犯罪として規定することを勧告。
●性暴力ポルノ
ゲームや漫画が児童ポルノ禁止法の対象外となっていることに懸念を表明、性暴力を当たり前かのように扱うビデオゲームや漫画の販売を禁止するよう、日本政府に強く求めるとともに、児童ポルノ法の改正を求める。
●日本軍「慰安婦」
被害者への補償、加害者の処罰、公衆教育など、問題の持続的解決措置を求める。
●人身売買、売買春
人身売買や売春搾取の被害者に対する保護やリハビリ、社会統合支援を強化するとともに、女性の経済状況の改善など、人身売買の根本的解決の努力を求める。
買春需要の抑制、売春女性の社会統合、リハビリ、経済的エンパワーメントなどの支援を勧告。研修生・技能実習生が人身売買の温床となっていることを指摘、モニタリングの継続を求める。また、人身取引防止議定書の批准を勧告。
●政治・公的活動への参加
政府や議会、法曹や学術領域の上位に就く女性が少なく、マイノリティ女性の公的活動参加に関する統計の欠如について懸念、事実上の男女平等な参加を確保するため、さまざまな手段による取り組みをもとめる。
●教育
教育基本法が改正され旧5条が削除されたことに懸念を表明、教育における男女平等実現のため、ジェンダー平等の条項を再度取り入れることを真剣に検討するよう日本政府に求める。非伝統的領域における女性の教育・キャリア機会を拡大すること、第三次男女共同基本計画において、大学教職における女性割合を現行の 20%から引きあげ平等を達成するよう勧告。
●雇用
労働市場における女性差別と賃金格差、出産・育児を理由とする違法な解雇、セクシュアルハラスメントの横行に懸念を表明。また、「雇用管理区分」が女性差別の抜け穴となっていること、ILO100号条約にもとづく同一価値労働同一賃金の原則が国内法規に欠けていること、セクハラ防止義務違反に対する制裁措置の欠如、差別是正のための法的プロセスに時間がかかりすぎることなどを批判した。
事実上の男女平等の達成を優先課題とし、女性の雇用・昇進機会を拡大すること、賃金格差の是正、違反企業への制裁強化、および救済手段の整備を勧告。
●ワークライフバランス
男女間の平等な家族責任と雇用の分担を促進し、女性がパートタイムに集中する状態を改善すること、保育施設の改善、男性の保育を促すことを勧告。
●健康
女性の性感染症の増加、若年の中絶の増加を懸念。特に若い世代に対し、セクシュアルヘルスに関する教育・情報・サービスを提供すること、中絶を非犯罪化することを勧告。
●マイノリティ女性
アイヌ、部落、在日コリアン、沖縄など、マイノリティ女性の教育、雇用、健康、福祉、暴力などに関する情報の欠如に遺憾の意を表明。マイノリティ女性への差別を撤廃するため、意思決定機関にマイノリティ女性の代表を加えることを勧告。
●弱い立場の女性
農村女性、シングルマザー、障害女性、難民女性、移住女性など、複合差別に遭いやすい弱い立場の女性について情報統計を提供し、特別なニーズに応じた政策をとるよう勧告。
●その他国際文書
北京行動綱領、ミレニアム開発目標、その他の国連人権条約を活用すること、移住者の権利条約を批准することを勧告。
『
FEM-NEWS : 女性差別撤廃委員会、日本政府にお灸』8月19日付にて、総論部分である20条の和訳を掲載してくださっていた。
■20条
女性差別撤廃条約は、女性に対する差別をなくしてゆくための、最も適切な法的拘束力を持った国際文書である。
委員会は、日本政府に、ただちに次の方策をとることを要求する:条約が国内の法制度において完全に適用されるようにすること、国の法規に条約の条文が完全に一致するようにすること。その際、必要ならば制裁を含めること。
さらに委員会は、日本政府に勧告する:裁判官、検察官、弁護士が、条約の目的・内容をよく理解し、司法の中で使えるようにするため、条約や委員会勧告の周知徹底に努力をすること。
加えて委員会は、日本政府に勧告する:公務員に、条約と男女平等を周知徹底させ、さらに条約と男女平等についての能力を高める研修を提供するような方策をとること。
繰り返しになるが、委員会は、日本政府が条約の選択議定書を批准するよう勧告する。そして、委員会は、選択議定書批准によって、条約が直接法的に使われるようになり、かつ女性に対する差別への理解を助けることになることを固く信じる。
そして同じく、『
FEM-NEWS : 女性差別撤廃委員会、日本政府にお灸』8月19日付より、「決定の場への女性参加促進」に関連する、28と42の和訳。
■28条
委員会は、日本政府に強く要求する。条約4条1節、ならびに委員会勧告25条にのっとって、あらゆる分野における決定の場に女性の代表が増えるよう、女性の雇用分野、政治的公的分野や学術分野への女性の参画について、達成しようとする数字と年月を明示した暫定措置をとること。
■42条
委員会は日本政府に要求する:実際に女性が男性と平等になるために、条約4条1節、ならびに委員会勧告25条における特別措置を実行して、政治的・公的分野における女性の代表を増やすこと。
さらに委員会は、女性が政治的公的分野の代表となることは人口の多様性を真に反映させることであると、日本政府が確信するよう奨励する。
加えて委員会は、日本政府に、次期レポートには、マイノリティの女性や移民女性を含め、女性が、政治的公的分野、学術、外交分野にどの程度参画しているかの統計と情報を提供するよう要請する。
委員会は、日本政府に求める:クオータ制や、一定基準、目標、動機づけなどの可能な方策を使うことを考慮にいれ、条約7条、8条、10条、11条、12条、14条の実行を強化すること。
さらに、『
女子差別撤廃条約実施状況の結果について | クレセントワークス[Crescentworks] 』スタッフブログさん(2009年08月19日)にて、総括所見の概要説明の後、
その他国際文書
北京行動綱領、ミレニアム開発目標、その他の国連人権条約を活用すること、移住者の権利条約を批准することを勧告。
と言うことで、
総括所見は、実に60項目に及んでいます。
前進面(肯定的側面)はわずか7項目。
これまでの委員会からの勧告を実施していないことが強く指摘されました。
差別的法規についての言及も目立ちました。
雇用も男女の機会均等を主張できる社会へと勧告は謳います。
そして、
総括所見は、日本政府に対し、
(1)民法の改正
(2)雇用・政治・公的領域等での暫定的な特別措置の2点について、2年以内に実施状況詳細報告を提出することを要請しています。
と、言うことで日本政府が速やかに勧告を守り実行するであろう今後に期待します!!!
…そうですね、期待しましょう!!!
(期待するだけは) ちなみに、今回の女性差別撤廃委員会審査へ、ロビー活動をするために多くのNGOが赴いたことについて「動員」がかけられていると批判的に見る人が結構居る様子が散見できるのだが…。1998年の国連・自由権規約委員会による「第4回日本政府報告書審査」の折に、アムネスティ・インターナショナル日本支部はこんな記事を公開していたものだ。
審査にあたっては数多くのNGOが、政府報告書の誤りや、政府が規約違反と思われる問題を隠していたり、国内で述べていることとの食い違いを報告していることを指摘すべく、独自の報告書を提出したり、オブザーバーとして委員会の委員に対するロビー活動を行なう。今回の審査においても、日本の多くの NGOがそれぞれの関心事項に基づいて活動を展開している。
また、今回の審査において、ある委員より、「これだけ多くのNGOが審査現地に来るということは、日本国内において、政府とNGOの間に十分な協議の機会が確保されていないことを示していると思われる。」という言及があったことに注目したい。この点は、「最終所見」にも明確に反映されている。今後、日本政府が「最終所見」に述べられた「勧告」を実施する際にはもちろんのこと、次回審査に向けたプロセスにおいて(政府報告書の作成段階から)、NGOとの十分な協議の機会を保障することを求めていく。
…眼を光らせないといけない、自国の代表達という状況を物悲しく感じたのであった。
余談の蛇足。
今回の女性差別撤廃委員会会期には、
「家族の絆を守る会」の会員の方達もオブザーバー参加してこられたという。「家族の絆を守る会」って何?と思われた方には、事務局長が岡本明子氏と表現すれば通じるだろうか。あの、
ネットで大量増殖した選択議定書反対運動の元となった文章「「女性差別撤廃条約」の危険性を纏めてくれました」「緊急拡散してください。ネットだけ転載フリー」の執筆者が「ジャーナリスト」の岡本明子氏だ。
『
在日韓国・朝鮮人も含めたフェミニストらは、大挙して国連に押しかけ、「従軍慰安婦」や議定書批准等々の問題について、日本政府に圧力をかけています。我々の手の届かぬ所での反日活動を展開しているのです』ということで、三野由美子・藤沢市議という方が参加したのだそうだ。ちなみに、この
「家族の絆を守る会」は、かの伊藤純子・伊勢崎市議とも仲がいいようだ。
…ブログには「のまりん」氏のコメントもあるし、こちらで同志として並んでいるサイトがああいった路線だ。 そして、『8月10日から3日間、世界80カ国余の保守が集まる、アムステルダムで開催される世界家族会議にも、私共は参加して、「従軍慰安婦」問題は嘘から始まったものであるという文書を作成して、配布してくるつもり』なのだそうである
(オブザーバー参加の箇所のリンク先参照)。結果のレポートは是非とも拝見したいと思っている今日この頃だ。
という情報を、いつも参考にさせていただいている
(けど、トラックバックが通らない)「
調査会法情報」さんの10日付エントリ「
調査会法情報090510 (元米兵捕虜・旧軍毒ガス・公文書)」で見かけた。ここですかさず「まさか」と思ってしまうわたくし、日本政府に対する信頼感に満ちあふれているようだ。
以下、紹介されていた新聞記事。私がとる前に魚拓が撮られていたから、このエントリを書いている間に
Apemanさんがエントリを上げられるかもしれない
(注;と予想してみたけど、16:00時点でまだだった(^^;)。
第二次世界大戦中にフィリピンを占領した旧日本軍が捕虜を数日間歩かせ、多数が死亡したとされる「バターン死の行進」を巡り、日本政府が駐米大使を通じ、元米兵捕虜の団体に謝罪していたことが9日、分かった。行進の現場「バターン半島」に日本が言及して謝罪したのは初めて。(後略)
…「日本政府が駐米大使を通じ」で、それで「公式謝罪」でいいのだろうか?と素朴な疑問に駆られるのは私だけだろうか。他の報道を探してみたが、日経のこのごく短い記事しか見当たらない。日本人の大部分が、そんなことがあったの?みたいな状態で、「公式謝罪」と称していいのだろうか…。
例えば、私の観測方面における例では、
オーストラリア政府がアボリジニの人達に公式謝罪した時は議会に謝罪決議をあげて首相がスピーチをし、
カナダの場合も、首相が先住民族代表を議場に招いて公式謝罪スピーチをした。ちなみに、日本の場合は、
「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が両院で採択されたけど、
橋本首相(当時)が個人として謝罪したとの情報はあっても、公式な謝罪はしていない。謝れない国だなぁと思っていたのに
日本政府が「公式謝罪した」とタイトルのついた報道がでていたので驚いたが、「国民のどれだけが知っているのだろう?」な何かの表明(日経報道では「日本政府が駐米大使を通じ」とあるから、下記を参照するに手紙の可能性も高い)を「公式謝罪」としていいのだろうか。
被害当事者の代表として活動してこられた
「全米バターン・コレヒドール防衛兵の会」会長;レスター・テニー氏は、この謝罪で喜んでくださっているようではあるものの、加害国の国民である一個人(私だけど)は今ひとつ釈然とできないでいる。
US-Japan Dialogue on POWsでは、4月9日に以下の記事が公開されていたようだ。
(略)
私たちの不運な歴史は昨年11月、私が、駐米日本大使と大使夫人と個人的に面談したことで、概ね決着しました。私はついに、日本の高官に私の物語を語ることができたのです。彼は、私の屈辱を聞き、私の傷を見つめ、そして私が捕虜のトラウマを乗り越えるのをこれまで助けてくれた日本人の友人たちのことを知りました。
私は大使に、私たち捕虜が正義を得られるよう、彼の政府に3つの依頼をすることを支援して欲しいと、頼みました。それは (1)政府からの正式謝罪(2)戦時中の捕虜労働に謝罪をするよう企業に呼びかけること(3)和解プロジェクトに加えてもらうこと、です。
12月になり、日本大使は、私が何十年も待っていたニュースを届けてくれました。彼の手紙には、日本政府が 「フィリピンのバターン半島とコレヒドール島で悲劇的な体験をした人々も含めて、多くの人々に多大の損害と苦痛を与えたことに、心からのお詫びを申し上げます。」 と書いてありました。
この肯定的意思表示に続き、2月には、“全ての元捕虜”に謝罪するという閣議決定を受けたステートメントが、日本の国会議員に伝えられました。それは、捕虜を特定する、或いは日本帝国によって傷つけられた特別なグループを特定する、初めての公式謝罪でした。
私たち捕虜は、長い間求めてきたこの謝罪を受け入れます。そして今こそ全ての関係者がそれを聞き、受け入れるために、日本がこの謝罪を公けに発表するようお願いします。私の他の二つの依頼にも、間もなくよい返事が貰えると信じています。70年近い年月がかかりましたが、日本が捕虜を不当に取り扱ったと認めたことで、歴史的正義が達成され、日米関係がより満ち足りたものとなるのです。平和な同盟国としての未来こそ、私たちが最初から望んでいたことでした。
多分、ここで言及されている12月の手紙が日経で「9日、分かった」と報じられた「公式謝罪」ではなかろうか。明らかになったのが今のタイミングなのは、前掲の日経報道によると「
メンバーの高齢化で今月末に解散する」からなのかもしれない。
2月に国会議員に伝えられたという「“全ての元捕虜”に謝罪するという閣議決定を受けたステートメント」「それは、捕虜を特定する、或いは日本帝国によって傷つけられた特別なグループを特定する、初めての公式謝罪」とは、私は少なくとも報道で見かけた記憶はないし(巡回先のブログで話題になっていた記憶もない)、「日本がこの謝罪を公けに発表」もされていないはずだ。
謝罪は被害者に受け入れてもらえるのが第一に必要な要素。ではあるのだが、本当に、こういう「公式謝罪」でいいんだろうか? 本当にいいの?それで?という釈然としない気分がぬぐえない。
以下、事件の被害証言の一部と、関連して印象に残った文章をメモ。
(略)
降服の後、私たちは直ちに炎天下のバターン半島を、食糧も水も、医療も休憩も与えられず、105キロの道のりを行進させられました。今日、「バターン死の行進」は、第二次大戦中の最悪の戦争犯罪の一つとして記憶されています。
私は、水を飲もうとしただけで撃たれたり、早く歩けなくてタンクに轢かれたり、一歩も進めなくなって銃剣で刺されたり、銃を突きつけられて病気の捕虜を生き埋めにすることを強いられた仲間たちのことを、決して忘れないでしょう。私自身も、馬に乗った日本人将校が日本刀を私の肩に振り下ろした時に負った深い傷跡を、今でも抱いています。
「バターン死の行進」に生き延びた者たちには、3年余の想像を絶する残虐な収容生活が待っていました。私も含めて多くの捕虜が“地獄船”に乗せられ、水も衛生施設も無い船倉に肩と肩が触れ合うほど詰め込まれた後、日本帝国全土の工場、鉱山、港湾に送られました。生き残った者は文字通り、戦時生産のために日本の私企業に売られたのです。
私は危険な三井鉱山で石炭を掘りました。全ての捕虜がそうだったように、私はこき使われ、殴られ、辱められ、飢えました。
他方、"捕虜の恥辱"という倒錯的価値観に支配された日本軍は、敵の投降者に対しても同じ価値観を強要した。
(略)
こうした事態は、(略)バターン半島における「死の行進」の原因ともなった。バターン半島で捕虜となった米国・フィリピン連合軍の将兵の場合、そのほとんどが飢餓やマラリアや赤痢や脚気等で活力を消耗していた。一方、コレヒドール島攻略に手間取り頭に血が上っていた日本軍は、敵の捕虜の状態など顧みる余地もなく、作戦に邪魔になる捕虜達を戦線の後方にしゃにむに構想すること以外思いをめぐらす暇はなかったのである。悲劇はこうして起こった。
(略)
「行進の途中、大きな掘り抜き井戸の前で停止を命じられた。(中略)捕虜は水を眺めるだけで飲むことを許されなかった。列から駆けだして水を飲もうとする者は撃たれたり、銃剣でさされた。死体はその場に置き去りにされた。先に進むにつれ目にする光景はますますひどくなった。(略)」
護送についていた日本兵は当たり前のように捕虜から身の回り品をはぎとり、竹の杖で殴りつけた。捕虜は何度も何度も"身体検査"を受け、歯ブラシ、万年筆、指輪、石鹸など手当たり次第に奪われた。ある将校は、結婚指輪をもぎとろうとした日本兵に抵抗したため、指輪ごと指を蛮刀で切り落とされた。
森本忠夫著、貧国強兵 第5章 虚構の崩壊 P.238
「私はレイテ沖海戦で乗艦が撃沈され米軍の捕虜となり、レイテ捕虜収容所に一年間収容されていました」と一市民関山栄次は、ある新聞の投稿記事の中で書いている。
「ここには約千二百人の日本人捕虜がいましたが全員が、同胞が命を賭けて戦っているとき安閑と的中に生をむさぼっていることを恥じ、ときには死にたいという衝動にもかられました。しかし日がたつにつれ米軍の態度がわれわれの常識と違うのに気付きました。監視のMPも軍医もみな親切だし衣類、食料、たばこなどに至るまで米兵並みに支給されます。掲示板には、捕虜は本国の家族と文通し必要品を送ってもらうこともできると書かれ、私たちははじめてジュネーブ捕虜条約なるものがあると知りました。ある日、収容所長のアバキャン中尉が意気消沈している私たちを集めて、「あなたたちは最後まで逃げずに勇敢に戦ったのだから決して卑屈になることはない。あなたたちは英雄なのだ」と言うのでした。長年、玉砕教育を受けてきた私たちにとっては驚きでした。
森本忠夫著、貧国強兵 第4章 強兵の形成 P.213、強調は引用者
歴史に名を残したことだけは間違いないと思われるが、大変残念なことに、歴代最短記録更新はならなかったようである。
「
私が火の玉になる」と仰せの方は、火だるまになったようだ。
(以下の強調等は引用者の勢いによる)中山成彬国土交通相は28日午前、首相官邸で麻生太郎首相に会い、一連の問題発言の責任を取り、辞表を提出し受理された。在任はわずか5日(後略)
就任五日での閣僚辞任は、現行憲法下では一九八八年、リクルート社からの政治献金問題で辞任した竹下内閣の長谷川峻法相の四日に次ぐ短さ。
辞表提出後に国土交通省での辞任会見では、
(略)
「臨時国会で緊急経済対策をスムーズに審議してもらうため」と、目を泳がせながら辞任理由を説明後、日教組批判を強気な口調で繰り返した。
辞任を決めた時期については言葉を濁したが、日教組の話題になると「政治家として撤回した考えはない」と滑らかな口調に急変。「がんの日教組をぶっ壊す」などとした二十七日の宮崎市での発言について「確信的にあえて申し上げた」と開き直った。(後略)
しかも、こんな事を口走ったらしい。
(略)「はっきり申し上げて辞任する覚悟で、確信的に申し上げた。(日教組問題について)国民の関心を引きたかった」と説明した。
「日教組の中で一生懸命子どものために頑張っている先生もいる。一部のそうでない人がいることが問題だ」とも強調した。自身の一連の発言については「言ってよかった」と心境を語った。(後略)
だが、自分一人が辞任する覚悟だったから良しという問題ではない。
次期衆院選の公認候補を決める自民党宮崎県連の選考委員会。この会合に出席するため、中山国交相は27日午前に地元・宮崎入りした。
本来なら大臣就任の凱旋帰郷。だが、会合の冒頭であいさつに立った同県連の緒嶋雅晃会長は、隣に座る中山国交相にこうクギを刺した。「先生自身も(発言の)表現のまずさについて十分に反省し、選挙に一丸となって取り組む県連の足を引っ張るような発言は厳に慎んでもらいたい」
選考委での中山氏のあいさつは、一連の発言問題を巡る陳謝から始まった。しかし、(中略)
選考委の場で、中山氏の言葉を聞いた地域支部長は「謝罪にも何もなっていない。これじゃ総選挙も戦えない」。県連役員も「自民党員以外の保守系有権者の票が逃げてしまう」と不安な表情を浮かべた。
中山氏を公認候補として賛成できるかどうかの1区の選考委員34人による記名投票では、反対票が1票入った。(中略)中山氏の公認申請は決まったが、県連の緒嶋雅晃会長は「勇気ある、貴重な1票では」。
そして、任命した人は、
(27日)午後には首相官邸に入り、29日に行う所信表明演説の勉強会に臨んだ。この後官邸を出る際、発言の受け止めや進退の取り扱いについて、記者団が質問したが、首相は無言のまま車に乗り込んだ。
勉強会に同席した河村建夫官房長官によると、国交相の発言について、首相は困惑したように「うーん」とうなるばかりだったという。
その後も
麻生太郎首相は28日、中山成彬国土交通相の辞任に関して内閣記者会が要請した“ぶら下がり”取材(質疑)を拒否した。
ところで、何でこんなんと思いきや、こんな話も発見
自民党総裁選で圧勝した首相は、気心の知れた者を重用する「ワンマン人事」を貫こうと試みた。だが、こうした思惑を見抜き、拒絶したのが政権の生みの親ともいえる森喜朗元首相ら町村派幹部。その強硬派の代表格が派閥事務総長を務める中山氏だった。
首相指名選挙の直前の24日午後の衆院本会議場。「どうなっているんだよ。清和会(町村派)が小沢一郎と書いていいのかい」。町村派が冷遇されそうな状況を受け、中山氏は官房長官に内定していた河村建夫氏に毒づいていた。
首相は物議をかもす発言の多かった中山氏に危うさを感じていたフシはあるが、町村派のごり押しで中山氏を任命せざるを得なくなったとみられる。
…本当に一体、何をしたかったのやら?
あっという間の辞任劇に“身内”の国交省幹部も「自爆そのもの。あきれてものが言えない」と憤る。成田空港の整備の遅れを地元住民の「ごね得」と表現したことなどについて、「閣僚としての自覚が無く、常軌を逸した発言で、政治家としての資質も問われる」と声を荒らげた。また、別の幹部は「日本という国が待ったなしの状況で、地に足を着けてやらなければならない時期に大変残念だ。大臣になる人には公人としての居住まいを正してもらいたい」と、国会答弁を一度もしないままの退場を嘆いた。
元千葉県成田市長で、県議や衆院議員として成田空港問題に取り組んだ千葉経済大の小川国彦特任教授(75)は「辞任は当然。そもそも、国土交通行政に精通していない人を大臣に選ぶ段階で間違っていた。『ごね得』発言は、成田空港の所管大臣としてたいへん不的確。大臣になって『これから勉強します』では遅い」と厳しく批判した。
でも、こういう人もいるから、中山成彬氏も言ってよかったと言い出すのかもしれない。ある千葉県の57歳会社員氏の発言として、産経が産経らしく「“失言”に関しては意見が割れた」と批判の意見とともに並べたのが、以下のような擁護、
事実を言っているだけなのになぜ失言といわれるのか。自由な発言を許さず、揚げ足を取る風潮こそが異常。辞める必要はなかった
…自民党宮崎県連会合での発言は
「日教組(日本教職員組合)は解体しなきゃいかん」「小泉(純一郎)さん流に言えば『日教組をぶっ壊せ』」「(日教組の一部は)教育基本法改正の時に国会を取り巻いたり、過激な性教育も行われている。国旗国歌も教えない。何よりも問題なのは、道徳教育に反対していることだ」などと批判。会合後、中山氏は「日本の教育の『がん』である日教組をぶっ壊すために、私が火の玉になる」と宣言した。
そして、
中山国交相の失言が深刻なのは、発言がいずれも過去の経緯や事実関係を踏まえていない点。成田問題で政府は95年1月、亀井静香運輸相(当時)が閣議で了解を得た上で、建設反対派の農家に謝罪文を提出した。「単一民族」問題も、国会が今年6月にアイヌ民族の「先住民族」認定を求める決議を採択したばかり。教育問題は、斉藤鉄夫環境相から「日教組の組織率と学力試験に相関関係はない。科学データに基づかない発言は大きな誤解を生む」と批判された。
「発言がいずれも過去の経緯や事実関係を踏まえていない」…まぁ、そういう人物だとは知っていたけどね。自民党に対して同情の念は湧かないながら、あるフレーズが脳裏に浮かんで仕方ない。
「こんなん連れてやってますねん」
参考;
当ブログにおける
中山成彬氏言及エントリへのリンク。
25日付のエントリで評判を拾ったり蒸し返したりしていたというのに、何も早速やらかすことはないと思う。韓国紙が呼ぶところの麻生内閣二大「「妄言師」の一角、自爆期待の星、中山成彬国土交通相がいきなりやってしまった模様。
25日に、共同通信社など報道各社とのインタビューで
(共同通信の報道による表現)、あるいは、産経新聞などのインタビューに応じ
(MSN産経による表現)、
成田空港建設への反対闘争について
ごね得というか、戦後教育が悪かったと思う
あるいは、
(反対住民らは)公のため自分を犠牲にする精神がなかった。自分さえよければいいという風潮の中で、空港が拡張できなかったのは大変残念。(空港整備が進む)中国がうらやましい
道路特定財源の無駄遣いに対して
国交省より社会保険庁のほうがひどかった。社保庁も組合はひどい。仕事しないで選挙運動ばかりしている
そこから、大分県教委の教員採用汚職事件にと話題が脱線して、
県の教育委員会の体たらくは日教組(が原因)。日教組の子供は成績が悪くても先生になる。だから大分県の学力は低い
結果の公表が議論となっている全国学力テストについて、
私が学力テストを提唱したのは、日教組の強いところは学力が低いんじゃないかと思ったから。現にそうだ。だから、学力テストを実施する役目は終わった
で、さらに、観光行政に関する問いで、外国人観光客の誘致策に関連しては
日本は『単一民族』といいますか、世界とのあれがないものですから、内向きになりがち
と答えた模様(呆)。
…んで、数時間後に発言を撤回したそーです。
この妄言っぷり、撤回すりゃいいってものじゃないでしょうに。
MSN産経2008.9.26 12:50付で、『「言い過ぎた」「辞任の考えはない」 国交相の謝罪一問一答』が出ていたので、
そこの2ページ目から;
単一民族については、頭の中にアイヌのこともあった。アイヌの人々は日本の北部周辺、特に北海道で独自の文化を有する先住民族ということを認識している。転居を余儀なくされたアイヌの人々が多数いたことを踏まえ、アイヌの人の誇りが尊重される政策を目指し、文部科学省とアイヌ文化振興法を進めている。アイヌ政策の推進に努めていく所存です。昨日の発言は誤解を招くと思い撤回した
頭の中にアイヌ民族のことがあって、「単一民族」と発言した? 意味不明である。
あるいは「言葉足らずで誤解を招くことはあるが、あれだけ長く話している。本心なのではないか」の質問に対し、
私人としての発言と公人としての発言は区別しなければならないと認識した
…認識するのが今頃なのだそうだ。
さらに重ねた「昨日は私人としてのインタビューだったのか、国交相としてのインタビューだったのか」の質問に対し
その自覚が不十分だった
…国交相
就任直後に新聞各社のインタビューへ、私人としての見解を混ぜて答えていたのだとしたら、そもそもこの人物がもつ大臣の資質に関して不安がありすぎるのだが
(あー、そこそこ。今更とつっこまないように)。
注;
「黙然日記」さんの2008年9月26日付『
産経と読売、中山氏をかばう』より。
さて、実際に日教組の組織率と全国学力テストの結果に関係はあったのかどうか。面白いところにソースがあります。
全国学力テスト結果と日教組組織率に関連はあるのかないのか - 国を憂い、われとわが身を甘やかすの記:イザ!
http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/362445
なんとあの、産経新聞政治部の阿比留瑠比記者が、この関連性に注目し、統計を取っています。そして、日教組と戦後教育を蛇蝎のごとく嫌っているあびるんは、表だけ作って結論を放り出しています。なにしろ、この表をどう見ても、関連性はないという結論しか出てきませんから。
産経が全国学力テスト発言「だけ」を報じていないのもわかりますが、それにしても中山氏、これだけはっきりした結果が出ているのに、なぜあれだけ自信たっぷりに日教組組織率との関連を断言したんでしょうかねえ。全国の学校の元締めを務めた人が「さんすうにがて」では済まないでしょうに。
pr3さん、貴重な情報をいつもありがとうございます。
なんとなく、「単一民族」発言を列挙。
1985年、中曽根康弘首相(当時)「日本は単一民族だから高い教育水準を保つことが出来るが、アメリカは多民族社会だから日本に比べてそれが困難」
*2001年、鈴木宗男衆議院議員「「私は(日本は)一国家一言語一民族といっていいと思う。北海道にはアイヌ民族というのがおりまして、嫌がる人もおりますけれど、今はまったく同化されている」@東京都内講演
*2001年、平沼赳夫経済産業相(当時)「小さな国土に一億一千六百万人のレベルの高い単一民族でぴちっと詰まっている。この人的資源があったからこそ、あの大東亜戦争に負けて原爆まで落とされて、いまだにアメリカについで世界第二位の経済大国の座を守っている」@自民党のセミナー
*2005年、麻生太郎総務相(当時)による「(日本は)
一国家、一文明、一言語、一文化、一民族」@九州国立博物館(福岡県)の開館記念式典祝辞
2007年、伊吹文部科学相(当時)「
大和民族がずっと日本の国を統治してきたのは歴史的に間違いのない事実。極めて同質的な国」@自民党長与支部大会
*** 中曽根発言、鈴木発言、平沼発言については、「Hermeneutic Log J」さんの2008年2月18日付『
日本を「単一民族国家」と呼ぶことの問題』より。
** 「Non-Fiction (Remix Version)」さんの2007年2月26日付『
なんでこの人たちは次から次へと』経由。
麻生新内閣について、個人的には注目度が低かったのでスルーしようと思っていたが、韓国紙と中国紙で評判をみたので、一応お持ち帰り保存。
評判は、、、少なくとも韓国からは上々の反対(下々?)。
面白いことをしているのが朝鮮新報。
日本語版の記事の一つ、2008/09/25 08:59:12付のタイトルが『
麻生新内閣:問題発言の常連、親韓派ら多様な顔ぶれ(上)』なのだが。本文と掲載写真で見るに、どう見ても同じ記事の韓国語版タイトルは『
'정치인 2세' 내각』。自動翻訳さんによると「'政治家 2世' 内閣」なのだそうな。
本文出だし前半を日本語版から引用。
「(植民地時代の)創氏改名は、朝鮮の人たちが『名字をくれ』と言ったのがそもそもの始まり」(2003年5月)という問題発言をしたことがある麻生太郎新首相の内閣の顔触れを見ると、自民党内で「問題発言の常連」とされる二人が主要閣僚に任命された。
この「問題発言の常連」は、原文だともっと辛辣なニュアンスであるようだ。次の段落には小見出しがついている。その小見出しは、日本語版だと「問題発言の常連2人」なんだが…。
韓国語版の小見出しをつけて、日本語版から一部引用。
◆両大「妄言師」登竜
国土交通相に起用された中山成彬氏は、元文部科学相在任中の05年に「竹島(独島の日本名)を日本の領土として教科書に明記すべきだ」と発言し、いわゆる「竹島妄言」騒動を巻き起こした人物だ。中山氏は旧日本軍の従軍慰安婦の存在自体を否定し、慰安婦に関する記述を教科書から削除する運動の先頭に立った。国会で最大の極右集団で、歴史歪曲(わいきょく)教科書を支持してきた「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の会長も務めている。
また、財務相と金融担当相を兼任することになった中川昭一元自民党政調会長は、A級戦犯を祭る靖国神社に毎年参拝し、日本の核武装を主張する極右派だ。慰安婦の強制連行を認めた「河野談話」の修正も要求している。
…「妄言師」。
なお、「竹島妄言」は、韓国語版だと「中川妄言」となっているようだ。
韓国からは、新首相とこの2人の注目度が高い。
あるいは、ハンキョレ新聞 2008-09-24付の記事だと、
『
극우·세습 의원…‘아소 사람들’ 전면 배치 (極右・世襲…「麻生内閣」全面配置)』
(略)
麻生総理は、就任するやいなや、自分のカラーを鮮明に打ち出した。彼は、この日、衆議院本会議で総理に選出された後に断行した人事で、内閣に強硬右派・世襲・側近など、自分と政治信条と出身背景が似ている議員達を大挙抜擢した。
(略)
右派や側近
侵略戦争や植民支配を肯定する自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」出の議員達が多く任命された。(後略)
…という感じ。
朝鮮新報では「外相には韓日友好関係の礎を築いた中曽根康弘元首相の息子に当たる中曽根弘文元文相がそれぞれ起用された。」と言及された、親・韓国&中国路線であることに言及のあった新外相も、世襲議員であることのみレポートされていた。
一方、中国紙では、
新浪網 2008-09-25付の記事によると、
『
麻生委親華外相建關係』
自民党総裁の麻生太郎氏が、水曜日の衆議院本会議で首相に任命された後、迅速に閣僚名簿を公表した。新閣僚の多くは保守派で、「中国脅威論」の中川財務相を含む。しかし、親中の中曾根弘文外相も任命されており、彼は中国との関係を強化すると公言している。
(中略)
17人の閣僚名簿を見ると、どうしても麻生首相が「縁故任用」している印象はぬぐいがたい。しかし、彼らは内政において意見が近くとも、中国に対する態度では大きく異なる。
二階俊博経済産業相は、日本の政治家で最も中国に友好的な国会議員の一人で、常に日中友好議場に尽力している。中曾根弘文外相と小渕優子少子化対策相は、それぞれ元首相の中曽根康弘と小渕恵三の長男と次女で、いずれも父世代の対中関係を重視する理念を受け継いでいる。
(中略)
しかし、自民党内の最右派の一人、中川昭一財務相は「中国脅威論」吹聴者であり、従軍慰安婦の存在を否定し、日本の核武装論を唱えている。かつて小泉内閣で文科相を務め、今回は国土交通相に就任した中山成彬氏は同様に、南京大虐殺を否定し、「慰安婦」問題における日本政府と軍隊の責任も否定している。初入閣の森法相は、台湾を「国家」と呼ぶ。
自爆系、親中系どちらにもバランスよく言及されているようではある。また、中国からの自爆系注目度は、韓国で注目の2人に加え、森法相の注目度が高そうだ。
さて、新首相について、おさらいというか、記憶をリフレッシュするために蒸し返しておこう。
(以下、強調は引用者(の勢い)による)麻生氏には「上から見下ろす視点」しかない。そもそも1979年に総選挙に立候補した時、支援者に対して「下々の皆さん」と発言したというエピソードが物語ってあまりある。一連の失言騒動も、もっとも苦しんでいる立場にいる人たちを想像することが出来ないことに由来していると思う。
『上から下を見下ろす人に総理の資質なし』(Yahoo!みんなの政治 - 保坂展人 - 活動記録、2008年9月22日付)より偏見・差別
「東京で美濃部革新都政が誕生したのは婦人が美濃部スマイルに投票したのであって、婦人に参政権を与えたのが最大の失敗だった」(一九八三年二月九日、高知県議選の応援演説)
「創氏改名は、朝鮮人の人たちが『名字をくれ』と言ったのが始まり」(二〇〇三年五月三十一日、東京大学での講演)
(北朝鮮のミサイル発射について)「(朝鮮労働党の金正日総書記に)感謝しないといけないかもしれない」(〇六年七月八日、広島市内での講演)
「地球温暖化を心配する人もいるが、温暖化したら北海道は暖かくなってお米がよくなる」(〇六年九月十三日、札幌市での総裁選演説)
「七万八千円と一万六千円はどっちが高いか。アルツハイマーの人でも分かる」(〇七年七月十九日、富山県高岡市での講演)
(幹事長就任のあいさつで訪ねた江田五月参院議長に)「審議をしないとどうなるか。ドイツでは昔、ナチスに一度(政権を)やらせてみようという話になった」(今年八月四日)
「岡崎の豪雨は一時間に一四〇ミリだった。安城や岡崎だったからいいけど、名古屋で同じことが起きたらこの辺、全部洪水よ」(九月十四日、名古屋市での総裁選演説)
『新総裁 麻生氏 発言録』(2008年9月23日(火)「しんぶん赤旗」)より。2005年10月15日 福岡県太宰府市での開館記念式典の来賓祝辞で
「一文化、一文明、一民族、一言語の国は日本のほかにはない」
(2005年10月16日 朝日新聞)
「(北海道ウタリ協会から、アイヌ民族の存在を否定するような発言で、憤りを覚えるとの抗議を受けて)民族、言語、文化が大幅に入れ替わらず比較的まとまってきた日本の特徴を述べた」
(2005年11月1日 朝日新聞)
『麻生太郎 おもな発言録』(JANJAN 2006/09/08)より。「やかましい」は「プロ」の意味?麻生氏、農水相を擁護(朝日新聞)
(略)
太田氏と同じ福岡県出身の麻生氏は「関西以西の人は『やかましい』とみんな言う。『あの人はワインにやかましい』というのは普通の表現だろう」と解説。(中略)太田氏はテレビ番組で、国内の食の安全対策について「日本は安全なんだけど消費者、国民がやかましいから徹底していく」と発言。(後略)
『vanacoralの日記』さんの2008-08-19付『「やかましい」と「しょうがない」』経由。…新首相の最大の注目点は、やっぱこの路線になってしまうのは仕方あるまい
(多分)。
こっちもあるけど。
2008年9月13日(土)「しんぶん赤旗」『
自民総裁選候補の政治資金 巨額の“上納金” 飲食費』
総裁選最有力候補といわれる麻生太郎幹事長は、集金額も最多です。同氏の資金管理団体「素淮(そわい)会」の収入は一億三千六百五十万円。このうち八千四百七十万円が昨年六月に都内のホテルで開いたパーティーの収入です。
一晩で八千万円以上も集金したパーティーですが、会場代などにかかった経費はわずか五百四十二万円。しかもパーティー券の購入先がはっきりしているのは、九社が購入した七百二万円分だけで、残りは公表義務のない二十万円以下として処理されており、実態は不透明です。(後略)
asahi.com 2008年9月25日11時51分『
未明の初閣議 首相、身ぎれいにと指示』から一部のみ
25日未明の初閣議では、首相は政治資金の問題について「自ら説明できるように」と各閣僚に収支の内容を十分把握しておくよう指示。
不透明なのは、きっと説明できるんだろうから、議員さん、どなたか質問してくれないかな。
6月6日に衆参両院で
全会一致で採択された「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」と、採択直後に政府の公式見解として公表された
『アイヌ民族について』の官房長官談話をふまえた措置として、『アイヌ民族の権利や地位向上を議題と』する「アイヌ政策のあり方に関する
有識者懇談会」のメンバーが6月30日に決定され、
8月11日に懇談会の初会合が官邸で開催されていた。
報道によると、初回会合では、懇談会の委員であり、アイヌの生活相談員を18年間務めたというウタリ協会の加藤理事長が、実際に見てきたアイヌの人達の生活実態に関する事例を報告したという。
そして、懇談会の第二回会合が、17日午後に首相官邸で開催されていたとの報道が出ていた。
今回は、高橋・北海道知事と加藤忠・北海道ウタリ協会理事長の両委員からの要望を聴取したそうだ。
時事ドットコム 2008/09/17-18:49付
『
アイヌ政策で新組織設置を=北海道知事が提言-有識者懇 (魚拓無し)』から一部。
北海道の高橋はるみ知事はアイヌ政策を統括する新たな組織を政府内に設置するよう提言した。
また、北海道ウタリ協会の加藤忠理事長はアイヌ民族の生活を支援するため、予算措置を伴う新法の制定を要望した。この後の記者会見で、町村信孝官房長官は新組織の設置について「もっともな提案だと評価している」と前向きな考えを示した。
読売新聞 2008年9月18日付
『
アイヌ政策部署新設を 首相官邸で有識者懇談会 (魚拓無し)』から。
(略)
高橋知事は、アイヌ民族の生活向上や文化振興の取り組みなどを紹介、〈1〉法的根拠に基づく国レベルの総合的アイヌ政策の確立〈2〉政府内にアイヌ政策を統括する部署の新設――を提案した。加藤氏も、政府の総合的な窓口機関やアイヌ民族の研究・教育施設の設置などを提案した。(中略)町村官房長官は17日夕の記者会見で、「内閣は替わるが、懇談会は予定通り、1年間審議していただきたい」と語った。
…「1年間審議していただきたい」あたりは、当たり前じゃとしか評価のしようがない。
北海道新聞 09/18 07:21付
『
アイヌ新法を要望 ウタリ協理事長 担当機関設置も (魚拓無し)』から一部抜粋。
加藤理事長らは生活や教育支援を含む総合的なアイヌ政策推進のための新法制定や、政策を統括する政府内の窓口機関の設置などを求めた。
(略)
有識者懇座長の佐藤幸治京大名誉教授は終了後の会見で「政策の内容によっては法律的な手当ては当然」と新法を前向きに検討する姿勢を示した。町村信孝官房長官も十七日夕の定例会見で窓口新設の要求に「ごもっともな提案」と話した。
座長と官房長官が提案を呑む方向のコメントをしたのをチェック。
さらに別の部分を抜粋。
アイヌ文化振興法は文化振興策に限定され、就学援助など道が行う生活向上策は同法に基づかない。加藤理事長は「総合的な施策には(新たな)立法措置が欠かせない」と話し、道外在住者も含むアイヌ民族の社会的、経済的地位向上を図る支援策などの根拠として新法制定を求めた。
そしてもう1箇所。
また加藤理事長は来夏に提言をまとめて終わる予定の有識者懇に代わり、継続的な審議機関設置も要求。「先住民族の権利に関する国連宣言」が掲げた自決・自治権など「先住権」取り扱いの検討を念頭に、政府やアイヌ民族代表のほか、国連など国際機関からの参加も求めた。
そして、今回は北海道新聞が詳しかったのものの、やはり、この件に関しては詳しいのが(何故か)毎日新聞 2008年9月18日 1時44分付
『
アイヌ:道ウタリ協会がアイヌ新法要求 高橋知事も同調 有識者懇談会で (魚拓無し)』
(略)
97年に制定されたアイヌ文化振興法とは別に、アイヌの先住民族認定を前提とした新規立法に踏み込むかどうかが今後の議論の焦点となりそうだ。
加藤理事長は懇談会で(1)教育の充実(2)アイヌ研究への支援(3)全国の大学などに分散している遺骨の返還と慰霊施設設置--など7項目の具体策を提案。生活や教育の支援には予算措置が必要となるため、その裏付けとなる新規立法を要望するとともに、先住権の扱いなど総合的なアイヌ政策を検討する審議機関の設置▽国土交通省や文部科学省、農水省などに分かれているアイヌ政策の窓口一本化も政府に求めた。
どうも、北海道新聞で町村官房長官が「ごもっともな提案」と語ったらしい「窓口」はこれのことらしい。
高橋知事もほかの国民との生活・教育水準の格差是正を目指す新法制定を要望。政府内にアイヌ政策の統括組織を新設する必要性を訴えた。
懇談会後、加藤理事長は記者団に「一番重要な点は生活や教育の向上など積み残された課題を盛り込んだ立法措置にある。新法を制定し国の責任を明確にしてほしい」と強調。佐藤座長は記者会見で「統括セクション新設などは重要な論点。今後の懇談会で議論していきたい」と述べた。
次は10/13-15に札幌市など三箇所を視察して、地元のアイヌ代表と意見交換、11月には東京在住のアイヌの人から話を聞く予定、とのこと。
提案された7項目の具体案のうち、報道されているのが3項目だけで、他が見当たらなかったのだが。。。
「全国の大学などに分散している遺骨」というくだりが、あまりに痛ましい。返還される事は、当然すぎるほど当然だろう。
関連情報をメモ。
『
アイヌ民族情報センター活動誌』さんの2008.7.27付『
強制連行の末』
昨日書いた「東京・イチャルパ」の件で、昨夜、違う資料を見つけて斜め読みしました。
1872年の「開拓使仮学校付属北海道土人教育所」の研究ものです。
北海道大学教育学部の論文で、廣瀬健一郎著、「開拓使仮学校附属北海道土人教育所と開拓使官園へのアイヌの強制就学に関する研究」(北海道大學教育學部紀要= THE ANNUAL REPORTS ON EDUCATIONAL SCIENCE, 72: 89-119)です。
(中略)
それはそうと、「強制連行」されたアイヌ民族は同化政策として学校での学問や農業指導だけではなく、寄宿舎においても「土人取締役」なる官吏によって「監督指導」されていたことが記されていました。日常生活全般に渡って監視の目が光っていたのですね。
オーストラリヤやカナダ政府がアボリジニやカナダ先住民族の親と子を離して、隔離政策したことを先日、謝罪しましたが、明治政府も同じことをしていたのです。(後略)
『
アイヌ民族情報センター活動誌』さんの2008.9.15付『
アシリチェップノミ』から一部。
国の謝罪についてわたしも述べてきましたが、先日のアイヌ文化普及啓発セミナーでの、阿部一司さんのお話(8/29)で、新たな事実を聞きました。
それは‘97年に「アイヌ文化振興法」が制定された際、当時の首相だった橋本龍太郎が阿部さんらウタリ協会役員の前で机に手を置いて謝罪したというのです。
この度のアイヌ民族を日本の先住民族として認めた国会決議前後には、このような話は聞いていないですね。
公の場での正式な謝罪は必要でしょう。
…必要だと思います。
『
アイヌ民族情報センター活動誌』さんの2008.9.4付『
アイヌ文化普及啓発セミナー受講報告』
二日目は「国連の「先住民族権利宣言」とアイヌ民族」と題して、阿部一司(社団法人北海道ウタリ協会副理事長)さんのお話。
重要な部分を当日配布された資料から引用させて戴きます。
アイヌ民族の要求は明確である。1984年北海道ウタリ協会は、6項目の「アイヌ新法案」をまとめ、北海道知事に要請した。北海道知事によって要請された「北海道ウタリ問題懇話会」は、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドを視察、調査をして「アイヌ民族に関する新法問題について」という報告書をまとめ、1988年、政府に提出している。
このたびの国連の権利宣言の採択を受けて、わが国における先住民族施策実施のため早急に、国の担当省庁、窓口を決めること。常設の審議機関を国に設置すること。「先住民族の国際10年」の行動計画に言われている、トライパータイト・コミッテイ(先住民族・政府。国連機関による国内3者機関)の早期開催を、強く求めるものである。(「今後の課題」より)
一年期限つきの「有識者懇談会」で、しかもアイヌ民族はたったの1名というものではなく、
時間をかけて審議する審議機関、そして国とアイヌ民族との接点となる窓口の開設等の要求です。
国として当然、設けるべきことだとわたしも思い、願います。
…
立命館大学人間科学研究所【えっせい】『
純血アイヌ、杉村京子さんの言葉』から一部のみ。
杉村京子さんはすでに故人となられている。彼女とは8年ほど前にお宅を訪問して、お話を伺った。彼女は「シャモ(和人)が憎い」とはっきりと仰った。残りわずかな純血アイヌとしての誇りがそう言わせたのは当然である。
11日、「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」の初会合が官邸で開催され、12日分の報道が出そろった、、、といっても、熱心に報道する機関が少ないけど、集めて保存。
8月4日、
(略)
道の「アイヌ政策を考える懇談会」は四日、札幌市内で開いた初会合で、政府に対して、アイヌ民族の歴史教育の充実や生活向上などの施策を求めていくことなどを確認した。
会合には高橋はるみ知事をはじめ委員五人が出席し、アイヌ民族が受けている差別や歴史的事実を全国にも広く伝えるため、政府に働きかけを強めていくことで一致した。(中略)委員の道ウタリ協会加藤忠・理事長は会合後、現行のアイヌ文化振興法だけではアイヌ民族の権利回復は不十分との認識を示した上で、「教育や生活などの課題をどうするのかということを、密着する立場として政府に言っていきたい」と述べた。(後略)
北海道新聞08/05 07:04付『歴史教育の充実要望 道アイヌ懇談会 国への政策提言で一致(魚拓無し)』より。具体的な政策提言については、「有識者懇談会」での議論の行方次第となったらしい。
8月10日、
(略)
有識者懇の初会合を翌日に控えた10日、明治時代に東京へ強制連行されて亡くなったアイヌの人たちを供養する伝統儀式「イチャルパ」が東京都港区の芝公園で行われ、約80人が集まった。アイヌ民族は北海道以外にも住んでおり、祭司を務めた関東地方のアイヌ民族団体「レラの会」の長谷川修会長は「これまでのアイヌ政策は北海道だけの地域政策になっていた。国としての政策を求めていきたい」と有識者懇への期待を語った。(後略)
毎日新聞 2008年8月11日 北海道朝刊『アイヌ民族:伝統儀式に決意込め 有識者懇きょう初会合(魚拓無し)』より。「文化振興策が中心だった従来のアイヌ政策を転換し、「先住権」の回復や生活・教育などの自立支援策にどこまで踏み込めるかが焦点」とのこと。
(略)
首都圏在住のアイヌ民族四団体でつくるアイヌ・ウタリ連絡会のメンバーが十日、同民族を代表して懇談会に参加する道ウタリ協会の加藤忠理事長と東京都内で会い、懇談会の議論に対する要望を伝えた。
同連絡会からは丸子美記子代表ら約二十人が出席。主に《1》就学支援など道内限定の福祉施策を道外のアイヌの人にも適用《2》全国のアイヌ民族が参加したアイヌ政策を決める新組織の創設《3》懇談会の傍聴を認める-の三点について、国に働き掛けるよう求めた。(中略)同連絡会によると、道外には首都圏だけで五千人以上のアイヌ民族が住む。(後略)
北海道新聞 08/11 07:18『政府初会合控え福祉策など要望 ウタリ連絡会』より。現時点では、既に第1回目の懇談会は開催されたが、「午後1時半から約1時間半、非公開で行われた」とのこと。たったの1時間半ということで、少し驚いた。
8月11日、「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」の初会合が官邸で開催。
(略)
町村信孝官房長官はあいさつで「差別され、困窮を余儀なくされたアイヌが多数に上るという歴史的事実を厳粛に受け止める」と強調。その上で「新しい総合的なアイヌ施策の確立に取り組みたい」と述べた。(中略)この日は座長に佐藤幸治京大名誉教授を選出。佐藤氏は終了後の記者会見で「アイヌの人たちにとって何が一番大事か見定め、国民に理解される結論を得たい」と語った。(後略)
共同通信2008/08/11 17:44 『アイヌ懇談会が初会合 来夏に政策提言(魚拓無し)』より。座長は、有識者懇談会のメンバーが発表された時点の報道通り。
(略)
佐藤氏は会合終了後、国連宣言に盛り込まれた財産権や自治権について「憲法解釈上詰めなければならない。建前にこだわるよりも実質的に何を実現したいかに焦点を合わせるべきだ」と述べ、アイヌ民族の生活状況改善などを優先して検討する考えを示した。(後略)
MSN産経2008.8.11 20:56『アイヌ有識者懇が初会合 座長に佐藤京大名誉教授(魚拓無し)』より。北海道新聞08/12 07:15付『
来夏にも政策提言 アイヌ有識者懇初会合 生活支援拡大が焦点(魚拓無し)』によると、佐藤京大名誉教授の専門は憲法学だそうだ。
懇談会の内容に関して、一番詳細な報道はやはり毎日だった。
(略)
出席者によると、アイヌの生活相談員を18年間務めた加藤理事長が10分間以上にわたって、時折涙ぐみ、言葉を詰まらせながら実際に見てきた事例を披露。(中略)会合後、加藤理事長は「アイヌの貧困を見てきた人間として、やるせない思いをしながら話した。小中学生でも差別に苦しむ現実が続いていることを知ってほしかった」と話した。アイヌからの要望に添いながら道の立場を主張していく考えを示している高橋知事も、「さまざまな格差が残っている。国主体で総合的な施策を行ってほしいと(懇談会内で)話した」と呼応した。
北海道大アイヌ・先住民研究センター長の常本照樹教授は「アイヌの声は多様なものがある」と指摘した上で、「(さまざまな)地域や世代の声をヒアリングして、十分審議に反映させるべきではないかと申し上げた」と述べた。(後略)
毎日新聞 2008年8月12日 地方版『アイヌ有識者懇:ウタリ協会・加藤理事長「今も差別や貧困」 /北海道』より。 そして、毎日新聞2008年8月12日付東京朝刊、『
クローズアップ2008:アイヌ有識者懇始動 「先住権」巡り駆け引き』の論調は厳しかった。
(略)
加藤理事長は初会合の席で涙ながらにアイヌの貧窮を訴え、有識者懇の議論を短期、中期、長期の課題に分けて進めるよう提案。生活水準の向上に直結する支援策を当面の優先課題とするアイヌの姿勢を他のメンバーに強く印象づけた。
アイヌ側には、97年のアイヌ文化振興法(アイヌ新法)施行後も他の国民との生活や教育の格差が縮まらないことへの不満が強い。北海道内のアイヌを対象に道が06年に実施した生活実態調査では、生活保護受給率が3・8%と他の住民の1・6倍に上り、大学進学率17・4%は半分以下だった。
こうした中、アイヌの人たちを勇気づけたのが07年に国連で採択された「先住民族の権利宣言」だった。(中略)これに基づき、衆参両院で今年6月、先住民族認定を政府に求める国会決議が採択された。
(中略)
しかし、政府は国連の宣言通りに先住権を認める姿勢ではない。
「国連宣言には先住民族の定義がなく、国連宣言と国会決議の先住民族が同義であるか結論を下せる状況にない」。国会決議後、鈴木宗男衆院議員の質問主意書に政府はこんな答弁書を出した。政府は決議を受けた官房長官談話で「先住民族であるとの認識の下」にアイヌ政策を進めると表明したが、国際法や国内法令に基づく「認定」ではないというわけだ。
…orz
この辺、すでにツッコミ疲れたような気がするけど、、、
オーストラリア政府はアボリジニのみなさんに、
カナダ政府も先住民族に公式謝罪しているのに、日本はアイヌ民族に公式謝罪はしてないし、
ニュージーランド政府は先住民族に土地返還を返還したり補償してるんだけど、
2008年5月21日の一部改選でアジア枠最多の155票を得て再選された国連人権理事会の理事国である日本がそれでいいのかなぁ。
(中略)
アイヌ側が求める支援策の実施には、だれがアイヌなのかを特定する「個人認定」という課題も待ち受けている。
差別を逃れて北海道から各地に移り住んだアイヌも少なくないとされるが、政府が先住民族アイヌの存在から目を背けてきた結果、全国に何人いるかも分からないのが現状だからだ。上村英明・恵泉女学園大教授(先住民族論)は「海外では民族団体が個人認定を実施している。北海道ウタリ協会は全国のアイヌを代表する組織ではなく、今後は全国組織化が大きなテーマになる」と指摘する。
北海道は国の補助を受け、高校進学奨励や農林漁業対策などアイヌ関連施策(今年度予算15億1800万円)を実施しているが、対象となるアイヌの認定は同協会や市町村から得た地縁・縁故情報が頼りという状況にある。こうしたアイヌ施策は北海道だけで、道外のアイヌには「アイヌ間格差」への不満もある。全国組織化を図る動きもあるが、進んでいないのが実情だ。
…orz
以下に、この社説にあった「アイヌ民族の法的権利をめぐる動き」も引用。
84年5月 北海道ウタリ協会が民族的権利の回復や経済的自立対策などを求める新法案提起
95年3月 政府が「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」を設置
96年4月 有識者懇が「先住性」「民族性」を認め文化振興策を求める報告書提出
97年3月 札幌地裁が二風谷ダム訴訟の判決で「アイヌを先住民族」と認定
5月 アイヌ文化振興法成立。北海道旧土人保護法は廃止
07年9月 国連総会で「先住民族の権利宣言」採択
08年6月 衆参両院がアイヌを先住民族と認めるよう政府に求める国会決議を採択